2007 Fiscal Year Annual Research Report
成熟視覚野における方位選択性可塑性の回復に関する研究
Project/Area Number |
19300141
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 繁 The Institute of Physical and Chemical Research, 視覚神経回路モデル研究チーム, チームリーダー (70281706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 利樹 独立行政法人理化学研究所, 視覚神経回路モデル研究チーム, 研究員 (60392031)
中釜 勇人 独立行政法人理化学研究所, 視覚神経回路モデル研究チーム, 研究員 (70332319)
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Keywords | 大脳皮質視覚野 / 方位マップ / 方位選択性 / モノアミン / 可塑性 / 感受性期 / 方位制限メガネ / 内因性光計測 |
Research Abstract |
本研究提案は、発達脳におけるシナプス可塑性ならびに固定化を誘導する内的動機付け・注意・覚醒・睡眠との行動学的相関に関する研究の基礎付けを行うとともに、弱視に対する薬理学的治療の可能性についても検討することを目的とする。既に、モノアミントランスポーター阻害剤であるメチルフェニデート(リタリン)やノルアドレナリン合成前駆体であるドプスを成熟ネコに1週間経口投与し、同時に方位制限メガネを装着して飼育することにより、劇的ではないが方位マップの再編に成功している。本年度は、まず正常な成熟ネコの方位マップが、視体験操作だけで変化するか否かを調べ、次に視体験操作によって再編された成熟ネコの方位マップが、モノアミン投与によって回復するか否かを調べた。成熟ネコ(生後12週)に、垂直方位のみを視体験させる方位制限メガネを装着し、通常飼育環境下で16週間育て、この間の方位マップの変化を内因性光計測法を用いて調べた。メガネを2週間装着した時点では、垂直方位に反応する領域がわずかに増加したが、さらにメガネを装着し続けると、水平方位に反応する領域が増えた。これは、生後3〜4週のネコに垂直方位を視体験させる方位制限メガネを装着しつづけた場合には、垂直方位に反応する領域が劇的に増加するという従来のデータとは異なる結果である。すなわち、方位制限視体験の効果は幼若ネコと成熟ネコとでは逆向きに現れることを示している。次に、幼若ネコに、形状視制限メガネ(パターンが見えないメガネ)を装着して飼育した場合には、水平または垂直方位が過剰表現する構造不安定な方位マップが形成されるという性質を利用して、モノアミンによる方位マップの回復効果を調べた。生後3〜4週のネコに形状視制限メガネを14〜17週間装着し、構造不安定な方位マップの形成を確認した後に、1〜2週間で合計120〜145mgのリタリンを与えたところ、方位マップの構造は変化しなかったが、方位選択性が向上した。以上の結果から、感受性期を過ぎたネコの視覚野でも、視体験の操作による逆説的過剰表現が見られること、およびモノアミンが方位選択性を向上させることが示された。
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