2007 Fiscal Year Annual Research Report
微小循環モックシステムによる糖尿病性及び虚血性血流障害と細胞間相互作用の検討
Project/Area Number |
19300163
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
南谷 晴之 Keio University, 理工学部, 教授 (70051779)
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Keywords | フィジオーム / 微小循環 / モックシステム / 糖尿病 / 内皮細胞 |
Research Abstract |
微小循環を模擬した圧流量制御可変なマイクロ流体デバイスを作製し、フローデバイス内に内皮細胞を安定化培養した状態で、生体の血圧(貫壁性圧力)と剪断応力を付加できるモックシステムを構築した。これを用いて高血糖および高血圧下の微小循環障害における内皮細胞と血球細胞の相互作用を分子生理機能の観点から探究することを目的として実験を行った。フローデバイス内の流れは灌流速度2〜30mms^<-1>、shear rate 100-1500s<-1>に制御することが可能であり、定常流と拍動流の双方が模擬できる。また、大動脈(100±20mmHg,15±5dynes/cm^2)、細動脈(35±10mmHg,20±3dynes/cm^2)、細静脈(10±5mmHg,3±1dynes/cm^2)、高血圧(120+100mmHg,25+10dynes/cm^2)レベルの貫壁性圧力と剪断応力を内皮細胞に負荷することが可能である。ヒト臍帯静脈内皮細胞とヒト大動脈内皮細胞の形態変化、細胞接着促進因子や走化性因子の定量分析を蛍光イメージング法やRT-PCR法などを用いて行った。上記メカニカルストレスに対する内皮細胞の配向性や細胞骨格分子Fアクチンと細胞間接着分子VEカドヘリンの変化を検討した結果、定常流より拍動流の方が血管内皮のリモデリングを促進することが明らかとなり、本システムの有効性が示された。正常状態の拍動流負荷では内皮細胞に発現するICAM-1、VCAM-1、E-selectin、MCP-1のmRNAは定常流負荷のそれらより抑制され、拍動流が内皮細胞の機能を最適に修飾することが示された。しかし、拍動流の高血糖(D-glucose 30mM)下では正常血糖(同5mM)に比べ、上記遺伝子のmRNAの発現が増加し、糖尿病では内皮細胞の分子生理機能が変化して血栓形成性が亢進されることが認められた。一方、高血圧(180/220mmHg)状態では、正常血圧(80/120mmHg)に比べ、これらmRNAレベルが顕著に増加し、管壁性圧力の増加が易血栓性と動脈硬化の亢進に関与することが示唆された。
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