2007 Fiscal Year Annual Research Report
人工赤血球流体のリガンド反応ダイナミズムの生理的意義とリガンド治療剤への応用
Project/Area Number |
19300164
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 宏水 Waseda University, 理工学術院, 准教授 (70318830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 紘一 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80051704)
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Keywords | 生体材料 / 生物・生体工学 / ナノバイオ / 生体機能利用 / 人工血液 / 一酸化窒素 / 一酸化炭素 / レオロジー |
Research Abstract |
ヘモグロビン(Hb)はリガンド(ligand=配位子)として酸素を可逆的に結合・解離するだけでなく、別のリガンドとして一酸化炭素(CO)、或は一酸化窒素(NO)を強力に結合する。COは意外と容易に解離する条件もある。人工赤血球として開発されて来たHb小胞体(HbV)の製法、保存法、輸血代替としての効能、安全性に至るまで、リガンド反応の制御が強く関わっている。欧米で開発が進んでいる分子状Hb溶液の投与で観察される血管収縮と血圧亢進は、HbVでは回避されることが明らかになっているが、これは内因性のNO或はCOがHbによって捕捉されるか否かの特性が要因と考えられている。そこで、平成19年度には、ストップドフロー・ラピッドスキャン分光法からHbVのガス分子との反応速度について解析したところ、高濃度Hb溶液を粒子内に封入することによってNO結合が遅延され、脂質二分子膜は、ガスの拡散の障壁にはならないことが解った。ガス拡散のシミュレーションから、もともと結合の速いNOが粒子内に拡散してくる際に、急速に外側の高濃度Hb溶液に結合するため、粒子内部へのNO拡散の遅延(障壁)になることが結論できた。赤血球は粒子内のHb濃度が高く、また粒子径を大きくすることでNO、COの反応を遅延させており、この赤血球構造の生理的意義がHbVの設計に活かされていると結論できた。二つ目の課題として、最近では内因性NO,、COの生理的役割が十分に認知され、ガス吸入やドナー分子投与により積極的に薬理効果を得る新しい治療法も報告されている。そこで、COが配位したHbVを出血性ショック状態のラットに投与したところ、意外と速やかにCOが解離し、虚血再灌流傷害を低減させ、細胞保護効果を示唆する結果が得られた。効果と毒性の両面から詳細検討が必要であるが、新しい応用として期待できる。
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[Presentation]2007
Author(s)
酒井 宏水、土田 英俊
Organizer
第4回Heme Oxygenase研究フォーラム
Place of Presentation
京都府立医科大学
Year and Date
2007-08-24