2008 Fiscal Year Annual Research Report
人工赤血球流体のリガンド反応ダイナミズムの生理的意義とリガンド治療剤への応用
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19300164
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 宏水 Waseda University, 理工学術院, 准教授 (70318830)
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Keywords | 生体材料 / 生物・生体工学 / ナノバイオ / 生体機能利用 / 人工血液 / 一酸化窒素 / 一酸化炭素 / レオロジー |
Research Abstract |
COは毒性の高いガスであるが、生体内で産生される微量のCOの生理的役割(有用性)が認知されている。そこで、我々は、COが配位した人工赤血球(Hb小胞体:HbV)を、出血性ショック状態に陥ったラットに投与し、COの細胞保護効果について検討した。COガスをHbV分散液に通気し、CO-HbVを調製した。同様に、ラット洗浄赤血球を処理したCO-RBCを調製し、通常の酸素を結合した02-HbV,02-RBGと比較した。更に、Hbを内包しない空の小胞体(Empty vesicles,EV)の投与も検討した。ラット頸動脈から循環血液量の50%を脱血し、出血性ショック状態とした。15分後に上述の蘇生液を投与した。いずれの蘇生液の投与でも、血圧、血液ガス組成が速やかに回復したが、EV群のみ、3,6時間後に血圧が低下した。全例が生存し、COの毒性に起因する兆候は一切認められなかった。出血性ショックからの蘇生は全身的な再灌流傷害を引起こし、血中ALT,AST,LDHは、02-HbV群,02-RBC群,EV群で上昇した。しかし、CO-HbV群,CO-RBC群では有意に低い値を示した。血中HbCO量は6時間後には3%に低下し、同時にCOは呼気中に排気され、CO-HbV,CO-RBCともに、COを放出した後、酸素運搬体として機能した。活性酸素(02-)とNOが反応しONOO-を生じ、これが組織の3-nitrotyrosine化を誘起するが、抗3-nitrotyrosine抗体による免疫染色では、CO結合体の投与による酸化的ストレスの低下を示唆した。今回の実験結果から、活性酸素産生に関与するヘム酵素にCOが作用して、虚血再灌流傷害を低減している可能性があり、詳細を検討する必用がある。蘇生初期は酸素よりも循環血液量の回復が先決であり、人工赤血球の新しい使用法を示唆する。
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Research Products
(14 results)