2009 Fiscal Year Annual Research Report
人工赤血球流体のリガンド反応ダイナミズムの生理的意義とリガンド治療剤への応用
Project/Area Number |
19300164
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 宏水 Waseda University, 理工学術院, 准教授 (70318830)
|
Keywords | 生体材料 / 生物・生体工学 / ナノバイオ / 生体機能利用 / 人工血液 / 一酸化窒素 / 一酸化炭素 / レオロジー |
Research Abstract |
ヘモグロビン(Hb)に化学的修飾を加えた非細胞型のHb溶液の投与では、血管収縮による血圧亢進を引き起こす。この原因は、血管弛緩因子であるNOやCOを捕捉すること、また酸素を速やかに放出するために、血管の自動調節機能が働くためと考えられている。対して、細胞型のHb小胞体(HbV)ではこの副作用はみられない。リガンド反応ダイナミズムの詳細を調べるため、既にストップドフロー法による解析を行い、細胞型HbVではガス反応が遅延されることを確認したが(JBC 2008)、赤血球よりも反応は速かった。希薄条件(0.003g/dL)に限定される測定法であることが原因と考え、最終年度ではガス透過性のある微小細管(内径25um)を用い、実質的な濃度(10g/dL)のHbを含有する各種溶液[Hb、重合Hb(PolyHb)、HbV、赤血球(RBC)]を1mm/sの中心流速で灌流させ、Hb溶液のガス反応率を顕微可視吸収スペクトルにより計測した。細管をNOあるいはCOガスが溶解した水溶液に浸漬した場合、deoxy状態のHb, PolyHbは、HbVおよびRBCよりも速くガスを結合し、またHbVとRBCは同等の結合速度であった。細管を窒素雰囲気に曝した場合、酸素を結合したHbとPolyHbは、HbVおよびRBCよりも速い酸素放出を示した。細管内における粒子の拡散挙動をNavier-StokesおよびMaxwell-Stefan式を用いてシミュレーションしたところ、微小なHb(6nm径)では、側方拡散が速く流体の撹拌が促進されるが、粒子径の大きいHbV(250nm)ではそのような速い拡散はみられなかった。この側方拡散の違いが、ガス反応性の違いを生じていると考えられる。このように、リガンド反応ダイナミズムの解析から、Hb小胞体の安全性を裏付ける結果が得られた。
|
Research Products
(22 results)