Research Abstract |
これまで私達は、生体内で形成されるAGEsの中でも特にglyceraldehyde由来AGEs (toxic AGEs, TAGEと命名)がAGEs受容体(RAGE)を介して糖尿病血管合併症の発症・進展に強く関わっていることを解明してきた。最近では,認知症,がん,高血圧,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの疾患にも関与することが明らかとなってきており,TAGEの影響を抑えることが生活習慣病の発症・進展の予防及び治療戦略上,必要なことがわかってきた。一方、AGEsは高血糖下で内因性に産生されるだけでなく,外因性に飲食品中からも摂取されることが報告されている。 今回,私達は市販飲食品約千種類について各種AGEs (glucose由来AGEs (AGE-1), fructose由来AGEs, TAGEなど)含有量を比較検討し,市販飲食品には多量のAGEsを含むものがあることを明らかにした。実際に高AGEs含有飲料を正常ラットに経口投与し, TAGE病因説への影響を検討した結果,ラット肝臓におけるRAGE遺伝子などの発現が増大した他,肝臓でのTAGEの蓄積が認められた。また,2型糖尿病モデルGKラットを用いた制限給餌系において, HbAlcやAGE-1の変動はみられないが, TAGEは食後の高血糖の繰り返しに伴って形成されることも見出した。 さらに,飲食品中AGEsの除去効果を検討するため,保存期腎不全患者に経口吸着剤・クレメジンを3カ月間投与した結果,血中TAGE量が低下するだけでなく, RAGE遺伝子の発現も抑えられることが明らかになった。すなわち,飲食品中AGEsの摂取制限や吸着除去と言う概念が,生活習慣病の発症・進展予防を考える上で,重要な理論の一つであることを裏付けているものと思われる。
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