2009 Fiscal Year Annual Research Report
陸域縞状炭酸塩(鍾乳石、トゥファ)から古環境情報をよむ
Project/Area Number |
19310011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 和久 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 教授 (80112291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 真司 九州大学, アイソトープ総合センター, 助教 (10253402)
松田 博貴 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80274687)
山田 努 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50321972)
栗崎 弘輔 九州大学, 大学院・理学研究科, 助教 (70507839)
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Keywords | 鍾乳石 / 古環境情報抽出 / 絶対年代測定(蛍光年縞) / 植生変遷 / 酸性雨 / 秋吉台長登 / 石筍中微量成分 / 古文書 |
Research Abstract |
1) 研究分担者、協力者が全員参加のもと、平成22年1月6日、7日に、九州大学において、以下の成果についての報告および今後の展開について研究集会を開催した。なお、1件の修士論文および1件の卒業論文となった。 2) α線、γ線スペクトロメトリーを用いた同位体希釈法によるU-Th絶対年代測定法のための前処理法およびイオン交換法によるU、Thの精製法を確立した。 3) 秋吉台の4地点から採取した石筍試料を用いて、炭素同位体比から植生の変遷を読み取った。ただし、草原植生にはネザサのように森林植生と同様の炭素同位体比を示すものが存在した。石筍中の微量成分について検討を行ったところ、ストロンチウムやマグネシウム含量が植生変化に伴い変化することが明らかになった。読み取った江戸期以降の植生変遷情報を、萩藩に残された古絵図などと対比すると、すべて符合することが分かった。江戸期に入って政情が安定し、水稲農業の拡大に伴い、肥料としてのカヤの需要が増したことと関連すると考えられる。 4) 奈良時代にはすでに稼動していた秋吉台長登銅鉱山から製錬に伴い排出された酸性物質(二酸化硫黄)の指標として、硫酸イオン濃度を測定した。2本の石筍からは同様の結果が得られ、西暦1400年以降に酸性降下物量が増えるとともに、植生が草原に大きく変化したことがわかった。土壌の酸性化も進み、土壌層からの金属イオンの溶脱が観測された。奈良大仏の銅を生産した鉱石はおもに酸化帯のものであることが推定できた。 5) 沖縄県宮古島の鍾乳石からは、炭素・酸素同位体組成に10年規模の周期的な気候変化が記録されていることがわかった。 6) 長崎県西海市七釜鍾乳洞から文化庁から許可を得て鍾乳石を採取した。石灰藻球石灰岩の上に玄武岩が覆う特殊な地質の地域において、水循環に伴う物質循環を明らかにすることができた。
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Research Products
(34 results)