2009 Fiscal Year Annual Research Report
湖底堆積物と海底堆積物の対比による高時間分解能の気候変動解析
Project/Area Number |
19310012
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
成田 尚史 Tokai University, 海洋学部, 教授 (50250501)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 勁 富山大学, 理工学研究科, 教授 (20301822)
|
Keywords | 気候変動 / 湖底堆積物 / 温暖化 / 縄文海進 / 海水準変動 / C-14年代 |
Research Abstract |
本研究の目的は、湖底堆積物と海底堆積物の対比を通して、日本列島北部の高時間分解能の気候変動を含む環境変動を明らかにするにある。このため、既存の海底コアの採取点に近い下北半島小川原湖で、過去2万年に及ぶ湖底堆積物を採取し、介在した一部火山灰試料のEPMAによる化学分析や貝片の放射性炭素年代の測定を行なうとともに、ボーリング時に採取した湖水及び周辺河川水の栄養塩、アルカリ度、酸素同位体比等の化学分析を実施してきた。本年度は火山灰のEPMA分析をサイド実施するとともに、貝片の放射性炭素分析の結果と合わせて、年代論の再構築をおこなった。堆積物表層から251~260cmに存在する2対の火山灰層は、上位が白頭山苫小牧(B-Tm)、下位は十和田a(To-a)に対比され、試料下部(2004~2211cm)の火砕流堆積物は十和田八戸(To-H, 16ka)起源と判断された。また、未同定であった936~946cmに存在する軽石層は、EPMA分析と放射性炭素の分析結果からも、十和田中掫(To-Cu, 6.23ka)であると判断された。以上年代論に加えて、間隙水の塩化物イオンの分析やスメアスライドまた電子顕微鏡よる生物化石の検鏡の結果から、小川原湖の湖水環境の変遷史を構築した。この年代は、縄文海進の最盛期に相当し、検鏡によりフランボイダルパイライトが確認されたほか、円石藻のGephyrocapsa oceanicaや海産のケイ藻類が確認されたことから、小川原湖に温かい対馬暖流系の海水が進入し内湾を形成していたことが強く示唆された。一方、堆積物間隙水の塩化物イオン濃度は、コア表層部から100cmに向けて単調に減少しており、海進後の海退期に砂州が形成し湾口が一旦閉鎖され淡水化が進行したが、19世紀後半以降再び海水が流入し、現在の汽水環境が成立したことが明らかとなった。
|