2009 Fiscal Year Annual Research Report
ベーリング海東部陸棚域における過去100年にわたる生態系変動
Project/Area Number |
19310018
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
原田 尚美 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球環境変動領域, チームリーダー (70344281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小栗 一将 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究主任 (10359177)
齊藤 誠一 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (70250503)
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Keywords | 近過去 / ベーリング海 / 生態系変動 / 海底堆積物 / 円石藻ブルーム |
Research Abstract |
ベーリング海の植物プランクトンの優占種は珪藻であり、二酸化炭素の吸収域として重要な海域である。ところが、1997年以来、東部陸棚域における円石藻の大増殖(ブルーム)が報告されるようになった。円石藻は、炭酸塩の殻を合成する際、二酸化炭素を発生するが、その量は光合成による二酸化炭素の吸収量に匹敵する。従って、円石藻ブルームの多発は、二酸化炭素を効率良く吸収していたベーリング海の役割を変えて、炭素循環に影響を及ぼすのではと考えられる。本研究では、ベーリング海東部陸棚域の円石藻ブルームが(1)いつから発生するようになったのか?(2)他のプランクトン種はどう変化しているのか?(3)その発生機構は?(4)発生の規模は?それから想定される二酸化炭素発生量はどの程度か?について、明らかにすることを目的としている。平成21年度は、(3)と(3)だけでは説明がつかない発生要因を探る研究を進めた。その結果、ブルームの発生要因には、太平洋十年規模振動(PDOと呼ばれる。ベーリング海上空で発生するアリューシャン低気圧の盛衰により、20-30年程度の周期性を持った北太平洋の温暖-寒冷気候変動。北太平洋東部と西部とで温暖と寒冷がシーソーで出現する)が正のとき、つまりベーリング海やアラスカが温暖な気候モードになり、海洋表層の成層化構造がよく発達し、安定した光環境と低栄養塩濃度がブルームを引き起こす要因の1つと考えられた。ただ、それだけでは説明がつかず、表層水の低塩化も植物プランクトン成長のエネルギー消費を押さえる役割を果たすことから、重要な要素であることがわかってきた。低塩化をもたらす要因には、アラスカの永久凍土帯の崩壊による淡水流入やベーリング海洋上の降雨量の増加など、昨今の地球温暖化の影響が考えられ、「海洋酸性化」につづき、「低塩化」も今後の海洋生態系に大きな影響を及ぼす第三の温暖化問題になるかもしれない。
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[Presentation] 気候変動と海洋生態系-円石藻の海と珪藻の海-2009
Author(s)
原田尚美, 佐藤都, 長島佳菜, 岡崎裕典, 小栗一将, 多田井修, 今野進, Richard W. Jordan, 齋藤誠一, 香月興太, Shin Kyung Hoon, 成田尚史
Organizer
日本植物学会
Place of Presentation
山形大学
Year and Date
2009-09-19
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