2007 Fiscal Year Annual Research Report
大気沈着窒素の特異な同位体シグナルを利用した生熊系影響の評価
Project/Area Number |
19310019
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
楊 宗興 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・共生科学技術研究院, 准教授 (50260526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木庭 啓介 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 准教授 (90311745)
泉山 茂之 信州大学, 農学部, 准教授 (60432176)
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Keywords | 大気沈着物 / 高地山岳生態系 / 安定同位体比 / 窒素飽和 / 窒素 |
Research Abstract |
1)環境中のNO_3-に含まれるOの安定同位体比を測定するシステムの構築と検討を行った。熱分解・分離装置を質量分析計と接続してNO_3-の超微量窒素・酸素同位体比測定システムを構築、予備的検討を行い、この測定法をほぼ確立し、実サンプル測定のための準備が整った。 2)イオン交換樹脂を用いる方法により、北アルプス山頂付近を含む数標高の山岳地域、および都市近郊の森林についてNO_3-およびNH_4+の窒素安定同位体比を測定することに成功した。その結果、NO_3-のδ15Nは都市近郊で3.3±1.8‰であったのに対して北アルプスでは-4.3±1.4‰であり、後者が画然と低い特徴を持つことが判明した。 3)窒素安定同位体比を、山岳地域で採取した他種類の地衣類について測定した。その結果、δ15N値は-12〜+1‰の範囲にあり、総じて低値を持つことが明らかとなった。着生形態による違いも見出され、サルオガセ類は常にとくに低く(-10‰程度)、大気中窒素化合物の存在形態により同位体比が異なる可能性が示された。 4)山岳生態系に負荷される窒素沈着物の総量の情報を得る等の目的のため、積雪を回収するサンプラーを中央アルプス山頂に設置し、回収を開始している。また、積雪自体を深度別に掘削採取し、今後各種同位体比、化学成分の挙動を解析する予定である。野生動物の試料も得られている。 (意義・重要性) 窒素沈着物が高標高域で低値を示すことがこれまで例のない沈着物の測定、地衣類の測定を通じて明確になった。これは、従来世界でも知られていない知見である。大気沈着窒素のδ15N値が明確になったことで、今後生態系影響の解析を行う基礎が固まった。
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