2008 Fiscal Year Annual Research Report
古座川水系七川ダムの放水が串本湾の底生生物群集に与えるインパクトに関する研究
Project/Area Number |
19310022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白山 義久 Kyoto University, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60171055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深見 裕伸 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (50402756)
加藤 哲哉 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 技術職員 (20397566)
嶋永 元裕 熊本大学, 沿岸域環境科学教育研究センター, 准教授 (70345057)
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Keywords | 環境影響 / 七川ダムの放水 / 底生生物群集 / 森里海連環学 / 串本湾 / メイオベントス / 環形動物 |
Research Abstract |
本研究では、治水ダムが豪雨時に行う放水に伴って、河川から河口域へ淡水が大量に流入し、河口域の海洋環境に深刻な影響を及ぼしている実態を明らかにすべく、古座川水系をモデルフィールドとして、その河口にある串本湾において海水の塩分低下と濁度の増加がもたらすインパクトを定量的に調べた。まず平成20年6月11日にベースライン調査を行った。その後、ダムの放水直後の7月7日と9月25日に海域調査を機動的に実施した(前2回の調査には平成19年度から繰り越した補助金も使用)。調査内容は、センサーによる常時観測、採泥調査および採水調査である。調査地点を串本湾の水深10.5mから22.5mの4点に設定し、底質については粒度分析と底生生物の分析を、また採水試料は、栄養塩の分析を行った。新規に行った9月25日の調査結果は、7月の調査結果に極めて近く、海底環境は特に湾奥の地点で影響が顕著にみられ、泥分の減少と有機炭素濃度の上昇があった。これはダムの放水で湖底に堆積していた植物遺骸が湾内に大量に供給されたためである。一方底生生物については、河口付近では放水後の方がむしろ個体数が多く、湾奥ではほぼ同じ水準であった。2回の調査でほぼ同じ結果を得たので、インパクトは湾の奥の方で顕著であるという結果は確実であるらしい。また本研究では、動物の同定に分子生物学的な手法を取り入れることを試みた。その結果、環形動物の科レベルの同定はミトコンドリアのCOI領域を分析することにより、確実に実施できることが明らかになった。
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