2008 Fiscal Year Annual Research Report
窒素安定同位体比を用いたPCBs及びPBDEsの各異性体毎の生物濃縮特性の解析
Project/Area Number |
19310024
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
竹内 一郎 Ehime University, 農学部, 教授 (30212020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 公栄 愛媛大学, 農学部, 准教授 (50116927)
高田 秀重 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (70187970)
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Keywords | 浅海域生態系 / PCBs / PBDEs / 炭素安定同位体 / 窒素安定同位体 / 生物濃縮過程 / 食物連鎖 |
Research Abstract |
本年度は、PCBs(ポリ塩化ビフェニール)に関しては伊勢湾および瀬戸内海より採集した植物プランクトンや魚類等の各種の生物を基に1?8塩素化PCBsの205異性体に関する異性体レベルでの分析等を行った。140?155のPCB異性体が伊勢湾および瀬戸内海の半数以上の生物試料から検出された。また、窒素安定同位体比(δN^<15>)と各PCBs異性体濃度を対数値間の一次相関式を求めた。この相関式の「傾き」は食物連鎖の上昇に伴う生物濃縮の指標として用いられている。その結果、どちらの海域でも湿重量ベースでは多くの異性体が有意な増加を示したが、脂肪重量ベースの「傾き」は湿重量ベースよりもいずれの海域でも0.1程減少した。脂肪含有量は栄養段階が上昇に従い増加するため、湿重量ベースでは高い生物濃縮がおこらないことが明らかになった。また、各異性体の「傾き」は塩素数の上昇に伴って1〜6塩素化PCBsまで増加したが、7〜8塩素化PCBsでは鈍化した。このことは分子サイズの増加による膜透過速度の低下等に起因すると考えられた。 PBDEs(臭素化ジフェニルエーテル)に関しては、昨年度に引き続き、東京湾湾奥部から採集された生物試料を基に、今年度は、#3?#209の20のPBDEs異性体の分析を行った。分析結果を基に、上記のPCBsと同様の解析を食物連鎖中比較的低次に位置する貝類から甲殻類(あるいは魚類)間を中心に行った。その結果、PBDEsは、いずれもlog Kow(オクタノール・水分配係数)がほぼ同じ値のPCBs異性体よりも「傾き」が小さく、PBDEsはPCBsよりも生物濃度増幅が起こりにくいことがより明確になった。このことはPBDEsがPCBsよりも代謝を受けやすいためと考えられた。 以上のように、本年度の研究は計画通り進行し得られた研究成果を国際シンポジウム等で公表した。
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