2008 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸同位体比質量分析を用いた過去30年にわたる食環境の変遷による生体影響評価
Project/Area Number |
19310025
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
伊永 隆史 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 教授 (30124788)
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Keywords | 食環境変動 / 安定同位体比 / 質量分析 / アミノ酸 / 生体試料 |
Research Abstract |
本年度は、現代人のヒト血清を用いて、有機物全体の炭素・窒素安定同位体比を測定し、食生活との関連性について、メチル水銀濃度も合わせて検討を行った。動物の窒素・炭素同位体比は食物資源を反映する。 また、メチル水銀濃度は工業汚染により発生し、自然環境中で生物濃縮することにより、高次消費者の体内に蓄積される。これら生元素安定同位体比やメチル水銀濃度は、ヒトの食生活を知る手がかりとなるだけでなく、環境汚染の広がりとヒトの健康被害との関連性を検討するためのバイオマーカーにもなり得ると期待されている。そこで、2007年京都府宇治市在住の24歳から81歳の男女44名の血液を収集し、その血清における炭素・窒素同位体比およびメチル水銀濃度を測定し、アンケートの集計結果と合わせて考察を行った。その結果、血清のメチル水銀濃度は魚介類摂取量が多い人ほど高い傾向を示した。血清の窒素同位体比もまた、魚介類摂取量が多い人ほど高い値を示し、窒素同位体比とメチル水銀濃度の間には強い正の相関がみられた。一方、これらの測定値と年齢や体重、性別との間に相関は見られなかった。以上のことから、ヒト血清中のメチル水銀濃度および窒素安定同位体比はどちらも魚介類摂取量の指標となり得ることが示された。今後、こうした現代人のデータを蓄積し、過去のヒトの試料と比較することにより、ヒトの食生活の変遷を明らかにし、ヒトを取り巻く環境の変遷を知ることができると考えられる。さらに、昨年度本研究で確立したアミノ酸の窒素安定同位体比分析法において、フェニルアラニンとグルタミン酸の窒素同位体比が食環境変動を検討する上で重要なツールとなりうることが明らかとなったことから、今後、分子レベルの同位体分析も合わせて検討を行っていくことが重要である。
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[Presentation] A study on feeding habit of Asiatic black bear by nitrogen isotope analysis of amino acids.2008
Author(s)
Rumiko Nakashita, Yaeko Suzuki, Fumikazu Akamatsu, Miho Sato, Mitsuaki Goto, Shigeyuki Izumiyama, Hidetake Hayashi, Muneoki Yoh, Toshio Tsubota, Takahiro Korenaga
Organizer
The 6th International Conference on Applications of Stable Isotope Techniques to Ecological Studies.
Place of Presentation
Hawaii, USA.
Year and Date
20080825-20080829
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