Research Abstract |
塩基置換型突然変異を誘発しないが発がん作用のある化学物質(pheny1 hydroquinone(PHQ),hydroquinone(HQ))について,出芽酵母およびヒト培養細胞を用いて調べた所,G2/Mの境界で細胞周期の進行を止めることが明らかとなった。この結論は,フローサイトメーター観察,細胞形態観察,チューブリン等の分裂装置タンパク質の染色,mitotic index観察,G2/M境界をコントロールするSwe1タンパク質の安定化やCdc2(Cdk1)タンパク質のリン酸化観察から導かれた。PHQやHQはp38(Hog1)MAPKをリン酸化することも観察した。酵母hog1やswe1遺伝子変異株は,PHQやHQによる致死作用に抵抗性となる。さらに重要なことは,PHQやHQは細胞分裂の際に,異数性を特異的に誘発するが,hog1やswe1欠損株では,異数性は誘発されない。一方,ヒト培養細胞の場合もPHQやHQはSwe1依存的に異数性を誘発するが,p38MAPK変異株でも正常でも等しく異数性は誘発される。ヒト細胞の場合,Swe1はATM/ATR-p53の経路でも安定化ずる。そこで,p53欠損株を用いて調べた所,G2/M境界での細胞周期停止が消失し,異数性形成も阻害された。この場合はしかしながらγ-H2AXのfoci形成やp53ser15のリン酸化は観察されなかった。すなわち,PHQやHQでは,ATM/ATRの経路とは別にp53経路を活性化し,その結果としてSwe1依存的にG2/M境界で細胞周期を止めその影響として細胞分裂に異常を起こし異数性が形成されること示唆された。紫外線やヒドロキシウレア等DNA損傷剤についても予備的に調べた所,Swe1依存的に異数性が誘発されていた。従って,G2/M境界での細胞周期の異常と異数性形成とが強く関連していることが示唆された。
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