2008 Fiscal Year Annual Research Report
放射線誘発クロマチン損傷シグナル増幅におけるMDC1/53BP1の役割
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19310038
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鈴木 啓司 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (00196809)
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Keywords | 放射線 / クロマチン / DNA損傷 / リン酸化 |
Research Abstract |
放射線照射後にATMの活性化による自己リン酸化が始まり、その活性によりヒストンH2AXがリン酸化され、さらに、リン酸化H2AXを基点としてさらなる複合体形成が促進されリン酸化ATMフォーカスサイズが増大することによりクロマチン損傷情報が連鎖的に増幅されるとすると、ATMの持続的リン酸化活性は、DNA損傷情報の増幅において欠くことのできない反応ということになる。そこで、放射線照射後にATMの活性を特異的に阻害することによりDNA損傷チェックポイント因子のフォーカスが消失するかどうかを調べた。 まず、使用したATM阻害剤であるKU55933(20μM)が、ATMの活性を完全に抑制できる条件であることを確認するために、放射線照射前に阻害剤を添加し、照射2時間後に細胞を固定してリン酸化ATMフォーカスを検出した。その結果、フォーカスは完全に消失することを確認した。そこで次に、放射線照射前から阻害剤を添加し、放射線照射30分後あるいは1時間後に阻害剤を取り除くことによってフォーカス形成にどのような影響が及ぶかを検討した。その結果、照射後に阻害剤を除くことによって、フォーカス形成およびフォーカスの増大がいずれも回復することを明らかにした。さらに、照射後から阻害剤を添加する実験を行ったところ、照射1時間後からの抑制でも、リン酸化ATMフォーカスは消失してしまうことを見いだした。これらの結果は、DNA損傷情報の増幅にはATMの持続的活性が必要であることを明確に示し、また、その活性化がリン酸化と脱リン酸化のバランスによって保持されていることも明らかにしている。これらの結果は、EGFP-53BP1を導入した細胞でも観察され、放射線照射直後の微細なフォーカスの形成から、照射数時間後のフォーカスサイズの成長まで、全ての過程にATMの活性が必要であることを確認した。
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Research Products
(15 results)