2009 Fiscal Year Annual Research Report
異種微生物間共生系による効率的脱塩素化メカニズムの解析と応用
Project/Area Number |
19310049
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
二又 裕之 Shizuoka University, 工学部, 准教授 (50335105)
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Keywords | 還元的脱塩素化 / "Dehalococcoides"細菌群 / バイオレメディエーション / 微生物間相互作用 / 水素生産菌 / 種間水素伝達系 |
Research Abstract |
本年度は、主として高濃度水素分圧条件下において、なぜ塩素化エテン類の脱塩素化が遅延するのかについて解析を実施した。高濃度水素存在下で脱塩素化が遅延する原因として、"Dehalococcoides"細菌群とMethanogensとの間における水素を巡る競合が考えられる。そこで、Methanogens活性阻害剤である2-bromoehtanesulfonate(BES)添加系と無添加系を異なる水素濃度条件下(0%および80%水素存在下)で作成し、塩素化エテン類の脱塩素化速度を比較した。その結果、予想に反し、BES無添加系に方がtetrachloroethene(PCE)およびtrichloroethene(TCE)の脱塩素化が1.2~1.6倍高かった。このことから、高濃度水素存在下における脱塩素化の遅延はMethanogensによる競合阻害ではないことが示された。次に、異なる水素濃度条件下での集積により微生物群集構造が変化し、その結果として脱塩素化活性に差が生じているのではないかと考えられた。そこで、これまで0%および80%水素存在下で集積培養した試料を親培養物として、それぞれ0%および80%水素存在下に植継いだ。即ち、0%(親培養物)から0%(子培養物)(以下0-0%系と略す)、0-80%系、80-0%系および80-80%系の4つを作成し、脱塩素化を測定した。その結果、親培養物の履歴に関わらず、0%水素存在下において最も高いPCEおよびTCE脱塩素化速度を発揮し、80%水素存在下では最も低かった。この結果等、脱塩素化の遅延は微生物群集構造の違いが影響している訳ではないことが示された。以上の結果から、高濃度水素分圧条件下における塩素化エテン類の脱塩素化遅延は、高濃度水素による脱塩素化機能の直接阻害と考えられた。今後、ヒドロゲナーゼの多様性と活性やRAP-PCRによる発現機能遺伝子の解析を通して、効率的脱塩素化メカニズムの理解を図る予定である。
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