2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19310074
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田村 厚夫 Kobe University, 理学研究科, 准教授 (90273797)
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Keywords | ナノチューブ / ナノファイバー / ペプチド / 分子間相互作用 / 生体膜 |
Research Abstract |
ペプチドを自己集合させ、さらに環内部に特定のアミノ酸を配置することで、形成させたペプチドナノチューブ内部に特異的に標的物を取り込む機能化を目指した。具体的な標的としては、自然界のタンパク質に存在する機能である:1)金属イオン結合性、2)核酸などの低分子生体物質との相互作用、3)抗菌、抗ウイルス物質などとして細胞内外の物質輸送とした。1)については、ペプチドナノファイバーの設計および製法についての特許およびこれに金属を配位し導電性とする技術を成立させた。この基本技術に加え、環状ペプチドで形成させたペプチドナノチューブについて、特定の金属イオンの取り込みを円二色性や核磁気共鳴などの分光測定および原子間力顕微鏡等による観察によって確認した。特に、パラジウムイオンと相互作用するケースを初めて発見した。2)については、GTP結合によるタンパク質の構造転移の研究を進め、機能化への足がかりとした。3)は生体膜とタンパク質が相互作用をすることで起こる現象であり、まず膜との相互作用で抗菌活性を発揮するペプチドを設計し、さらに細胞膜同士を接着させる新機能ペプチドの設計にも成功した。特に前者については、膜との相互作用に必要な因子として、静電相互作用と疎水相互作用のバランスを明らかにし、両親媒性ではないペプチドを用いた場合でも膜と相互作用させ、抗菌力を発揮させることができた。後者については、まずペプチド自身が一定数集合し、その集合体が生体膜同士をつなぐ「糊」の役割を果たす接着分子となることを見出した。このことは、ペプチド集合体が新規の人工設計機能分子として働く可能性を示したものである。以上のように、ペプチド状態での新規機能の創製を行い、ペプチドナノチューブ状態での機能化の数例の成功につなげることとなった。
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