2007 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノクラスターのキラル化学:基礎学理の解明と展開
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19310076
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
八尾 浩史 University of Hyogo, 物質理学研究科, 准教授 (20261282)
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Keywords | 金属ナノクラスター / キラル / 光学活性 / エナンチオマー / ナノ粒子 / 円偏光二色性 / 不斉場効果 |
Research Abstract |
研究代表者はこれまで、サイズが2nm以下のキラル金ナノクラスターエナンチオマーの作製に世界に先駆けて成功し、その光学活性の起源が、表面配位子のもたらすdissymmetric fieldにあるという概念を提唱した。本年度は、その内容を詳細に検討するため、(1)「金」以外のキラル金属ナノクラスターの合成・不斉光学特性の評価、(2)振動円二色性分光(VCD)測定の最適化と基礎データの蓄積、を主な課題として研究を実施した。その結果、リガク(株)佐々木明登博士の協力もあり、金ナノクラスター作製で確立された合成手法の一部改良により、1〜3nmの範囲で精密にサイズ分別されたキラル銀ナノクラスターの作製が可能である事を明らかにした。ここで作製された銀ナノクラスターは、金に比べて約一桁も大きな光学活性性能(異方性因子)を有する興味深い事実が明らかとなった。電子遷移に基づく吸収・円二色性(CD)スペクトルやそのサイズ効果を詳細に調べた結果、光学活性性能の増強効果は「銀」特有のものであり、銀クラスターの場合は中心金属コアが歪んで不斉となり得る可能性のあることを見出した。この結果は巨大な光学活性性能を持つ新たな金属クラスターの作製指針を与えるものである。一方で、キラル金ナノクラスターの水/油間の「相関移動」実験を実施し、通常の分光特性を変えることなくキラルな状態を保ったままの相関移動に成功した。相関移動に伴いそのCDスペクトルの変化は著しく、「金」の場合は表面配位子のdissymmetric fieldモデルを支持する結果が得られた。更に、今年度導入したVCD分光計による測定の最適条件検討にも注力した。本装置は汎用機器とは言い難く、様々な条件を最適化・決定する必要があり、特に、研究代表者が行う金属クラスターに対しては、濃度、溶媒、測定手順などがスペクトルのひずみに大きく影響を与えることが分かった。その結果、最適な溶媒、測定条件等のノウハウを蓄積することができ、本格的な測定に向けての重要な知見が得られた。
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Research Products
(14 results)