2008 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノクラスターのキラル化学:基礎学理の解明と展開
Project/Area Number |
19310076
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
八尾 浩史 University of Hyogo, 大学院・物質理学研究科, 准教授 (20261282)
|
Keywords | 金属ナノクラスター / キラル / 光学活性 / エナンチオマー / 不斉変換 / 円偏光二色性 / 不斉場効果 |
Research Abstract |
研究代表者はこれまで、サイズが2nm以下のキラル金ナノクラスター及びその鏡像異性体の作製に世界に先駆けて成功し、その光学活性の主な起源が表面配位子のもたらすdissymmetric fieldにあるという概念を提唱してきた。更に、金以外の金属材料を検討し、キラル銀ナノクラスターの精密合成にも成功した。得られたキラル銀ナノクラスターの光学活性性能は金に比べて約1桁大きく、金と銀でコアの構造・歪みが異なる可能性も示唆された。これらの成果を踏まえて、本年度は(1)金属ナノクラスター表面の配位子の吸着状態、特にそのコンフォーメーションの詳細を明らかにする事、(2)表面配位子の反応を応用して金属ナノクラスターの不斉変換、即ち、光学不活性な金属ナノクラスターにキラリティを付与・誘導する手法を開発する事、を主な研究目的として研究を行った。表面配位子の吸着状態は振動円二色性(VCD)の測定を通して行った。VCDは充分に確立された測定手法ではなく研究代表者にとって挑戦的であったが、溶媒、濃度、測定方法などを種種検討し、銀ナノクラスター表面配位子に対して興味深い結果を得る事ができた。また合わせてab initio加計算によって種々コンフォーメーションの妥当性を検討・考察した結果、理論計算では溶媒効果を含めなければIR及びVCDの結果を再現しない事、フリーな表面修飾子ではCOO^-基がSH基に対してtrans位にあるが、銀ナノクラスター表面ではNH_2基が銀表面に対してtrans位にある可能性が示唆された。一方、不斉変換については、キラル相間移動という手法を適用した。種々の相間移動剤を検討した結果、エフェドリニウム系の相間移動剤が好ましく、粒子径を変化させることなく水相から油相への相間移動を行うことができた。またその相間移動に伴い、元々ラセミ配位子で修飾された光学不活性な金ナノクラスターは新たに光学活性を持つようになり、世界で初めて金ナノクラスターの不斉変換に成功した。
|