2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノクラスターのキラル化学:基礎学理の解明と展開
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19310076
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
八尾 浩史 University of Hyogo, 大学院・物質理学研究科, 准教授 (20261282)
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Keywords | 金属ナノクラスター / キール / 光学活性 / エナンチオマー / 不斉変換 / 円二色性スペクトル / 振動円偏光二色性 / 不斉場モデル |
Research Abstract |
本研究代表者は、キラル配位子によって表面修飾されたキラル金属(金・銀)ナノクラスターを世界に先駆けて作製し、その光学・不斉光学特性の研究を通じて、金属ナノクラスターが発現する光学活性の起源解明に注力してきた。その結果、表面配位子の「不斉場」が重要な原因である事を明らかにした。また、光学活性の起源が金属の種類に依存する事も見出し、最近のイギリス王立化学会出版の総説(Nanoscale, 2010, 2, 343.)にも詳細に取り上げられた。今年度は、真に「アキラル」な配位子で修飾された金属ナノクラスターの不斉変換を達成し、その光学活性性能をコントロールする事を主な目標として研究を行った。そのためには、アキラルな配位子とそれを用いた小さなクラスターの合成、そのアキラルな配位子と相互作用するキラルな物質の探索、が必須となる。種々検討した結果、メルカプトフェニルボロン酸が非常によい配位子である事、この配位子を用いて合成した場合、コア直径0.8nm程度のサイズの揃った銀ナノクラスターが得られる事が明らかとなった。フェニルボロン酸はシスジオール類、とりわけキラル糖類と水溶液中で強く結合する事が知られており、これを利用して作製された銀ナノクラスターとフルクトース(キラル糖類)との結合による不斉変換を試みた。その結果、フルクトースの添加によってCotton効果が発現し、その濃度の増加に伴って円二色性(CD)シグナルの強度の増加が認められた。即ち、不斉変換及びその強度のコントロールが可能である事を明らかにした。得られたCD強度は、直接キラルなチオールを表面修飾したクラスターに比べて約1桁小さく、配位子不斉場の影響による光学活性の発現である事が明らかとなった。この結果はまた、既に本研究代表者が明らかにしたキラルチオール修飾銀ナノクラスターの光学活性の起源と対比するものであり、配位子の構造に応じて複数の要因が光学活性発現の起源に関わることを明らかにした。
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Research Products
(8 results)