2008 Fiscal Year Annual Research Report
コヒーレントX線回折顕微法による生物試料のナノ構造解析
Project/Area Number |
19310084
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西野 吉則 The Institute of Physical and Chemical Research, 石川X線干渉光学研究室, 専任研究員 (40392063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前島 一博 独立行政法人理化学研究所, 今本細胞核機能研究室, 専任研究員 (00392118)
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Keywords | コヒーレントX線回折顕微法 / ナノ構造解析 / 細胞内構造 / 低温生物試料 |
Research Abstract |
本研究は、可能な限り「生きた」状態に近い生物試料をコヒーレントX線回折顕微法で可視化する研究開発を行うことによって、生物現象の理解に貢献することを目的としている。コヒーレントX線回折顕微法では、生物学・医学上重要な「生きた」状態に近い凍結水和生物試料の観察の成功例は、世界的にまだない。凍結水和生物試料の測定においては試料構造の破壊を防ぐため、調整段階から測定に至るまで試料を低温に保つ必要がある。本年度は、凍結水和試料の観察に向け、試料を低温に保つ操作技術の開発を進めた。水和生物試料を急速凍結することによって、ガラス状の氷で試料を包埋した。その後、試料を液体窒素温度に保ち、SPring-8に搬送した。SPring-8では、前年度開発した「冷却試料操作装置」を用いて、試料を-150℃以下の温度に保ったままコヒーレントX線回折顕微鏡の真空チャンバに搬送する技術開発を行った。これにより、試料損傷の原因となる、氷晶の形成を押さえた試料搬送技術が実現した。また、コヒーレントX線回折顕微法による無染色ヒト染色体の可視化について論文にまとめ、Physical Review Letters誌に掲載された。無染色ヒト染色体の像再構成では、二次元のみならず、三次元の可視化にも成功した。コヒーレントX線回折顕微法による、三次元での生物試料観察は世界初である。可視化された染色体試料中には、電子密度の高い軸状構造が観察された。蛍光標識等をせず、染色体の軸状構造が観察されたのは世界初である。この研究により、コヒーレントX線回折顕微法が、厚さ1マイクロメートルを超える細胞や細胞小器官など、透過型電子顕微鏡にとっては厚すぎる生物試料の内部構造を、無染色で観察するのに有効であることが示された。この研究結果は、Nature、Physics Today、朝日新聞等、国内外で大きく紹介された。
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