2009 Fiscal Year Annual Research Report
統合管理のためのリスク・モデリングとシミュレーション手法に関する研究
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19310095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 眞理子 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 教授 (90323550)
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Keywords | ファイナンス / リスク管理 / 最適化 / シミュレーション |
Research Abstract |
平成21年度は金融リスク管理を主たるテーマに研究を進め、金利変動とマクロ経済の関係や信用リスクの推定、シミュレーション技術の改善等において一定の成果が得られた。他方、リスク間の相関や統合的な分析に関しては金融危機の発生に伴う研究の見直しの必要などもあり、今後の課題となった部分もある。研究実績の概要は以下のとおりである。 第1に、市場リスクの解析に関しては、これまでの研究を発展させ、金利の期間構造とマクロ経済の関係に関する実証分析をまとめ、学会発表(2010年5月)の予定である。 第2に、信用リスク評価については、非上場企業の大規模財務データベースを利用した倒産確率推定のモデルを構築・検証し、論文発表した。すなわち、2000年代前半を対象に多期間ロジットモデルによる中小企業の倒産確率の推定を行い、有用な説明変数やその期間構造を産業別に明らかにするとともに、マクロ経済を介した倒産リスク間の相関はあまり大きくないとの結果を得た。 第3に、金融危機による市場の混乱との関係で流動性リスクが大きな問題となったため、欧米市場におけるデータ等に基づき事例分析を進めた。具体的にはイギリスを対象に金融危機の背景、展開、政策を調査・分析し、論考をまとめた。 第4に、シミュレーションのための要素技術の開発については、20年度に引き続き、シミュレーションにおける乱数選択の研究、高速特異値計算法、大規模スパース線形方程式系の数値解法の開発を行い、後者2つについては国際会議で発表を行った。また、関数近似に関して、わが国で開発されたDE-Sinc関数近似による近似公式についての研究を行った。 金融危機の現実は、金利リスクや信用リスクなどの市場リスクだけではなく、流動性リスクがリスク管理における重要な問題となることを示しており、流動性を含めた統合的なリスク管理について研究を進める必要のあることが課題となった。
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Research Products
(7 results)