Research Abstract |
本研究では,必要な音声情報を必要な場所にだけ的確に伝える高明瞭度音響案内・誘導システムの実現を目指した。ここでは,超音波を音声信号で変調して空間内に送波し,超音波の自己復調現象を利用して音声を空間内に再生する,超指向性音響システムの開発を行った。いままでの研究成果を踏まえて,本研究期間では,特に超音波の音圧レベルの低減化を目指し,超音波エミッタの適切な駆動方式を検討した。すなわち,本システムは強力な超音波を使用するために,これが聴取者の聴覚器官に何らかの悪影響を及ぼすことが危惧される。従って,超指向性音響システムを有効に利用するためには,可聴音の音圧レベルは下げず,また超指向性という特長を生かしたまま,できる限り超音波の音圧レベルを下げる必要がある。この目的のために,ここでは超音波エミッタを偶数個の開口に分割して,それぞれの開口のエミッタを互いに逆位相を駆動し,空間内で超音波を打ち消し合う,空間位相反転方式を提案し,超音波の音圧の低減化を図った。開口の数にも依るが,2個の開口に分割したとき,従来の駆動方式に比べて,音軸上でおよそ10〜20dBの超音波の音圧レベルの低減化が実現された。これと同時に,従来から問題になっていた,再生可聴音の高調波歪みも10dB以上低減できた。この歪み低減は音声明瞭度に直接関わり,高明瞭度な超指向性音響システムの実現に大きな前進となった。
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