2009 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連圏アジア諸国・地方における歴史的伝統の再定義と学術・教育動向に関する研究
Project/Area Number |
19310151
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡 洋樹 Tohoku University, 東北アジア研究センター, 教授 (00223991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 卓 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (70195593)
北川 誠一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (50001813)
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (00305400)
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Keywords | モンゴル / ウズベキスタン / アゼルバイジャン / グルジア / サハ共和国 / 歴史認識 / 学術・教育動向 / ポスト社会主義 |
Research Abstract |
本年度は、モンゴル、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、グルジアおよびロシア連邦サハ共和国について、社会主義体制崩壊後の歴史認識や教育・文化政策の動向を比較するため、各研究分担者の研究を踏まえて、当該国から歴史記述にかかわる研究を行っている研究者各1名を招へいしてシンポジウムを開催し、討議を行った。シンポジウムにおける報告から、以下のような知見を得ることができた。第一に、社会主義体制崩壊後の諸国における歴史研究は、民族主義を枠組みとして進められているが、その民族の枠組みは基本的に社会主義期に成立したものであり、体制崩壊の前と後で連続性が認められる。第二に、民族主義的歴史記述は、ソ連体制への批判の上に成立しているものの、ロシアという中心の喪失後、これに代わる新たな方法的および地域・空間的枠組みを見出すことはできておらず、それぞれが孤立した歴史認識の構築を進めているように思われる。第三に、複数の国について、社会主義期から現在に至る歴史記述史の時期区分の理解に一致が見られることから、各国の歴史認識史理解に共通点が存在する。第四に、各国共に社会主義以後の体制の歴史的淵源を、19世紀末からの改革運動、特に1910年代後半から1920年代前半にかけて現れた自治共和国や独立共和国の存在に求め、社会主義期を民族独立に対する逸脱期としてとらえている。第五に、中心としてのロシアの消滅に伴い、国内におけるロシア語の比重低下と国際交流語化が進む一方、グルジアとアゼルバイジャンでは少数民族に対する言語政策で協力が見られる。第六に、これら五ヵ国の歴史記述には共通点と前体制からの連続性が認められる一方で、ロシアを強く意識する中央アジアやコーカサスと、中国からの独立というもう一つの課題をもつモンゴル、知識人を中心とした伝統文化、歴史理解の創出を進めるサハなど、各国独自の特殊事情、特色が認められる。
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Research Products
(16 results)