2007 Fiscal Year Annual Research Report
中世における人格理解の発展-スコラ学と神秘思想から人文主養へ
Project/Area Number |
19320004
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
RIESENHUBER K Sophia University, 文学部, 教授 (60053633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 直子 上智大学, 文学部, 准教授 (60296879)
長町 直子 上智大学, 文学部, 准教授 (90296880)
JOSEPH O'Leary 上智大学, 文学部, 准教授 (50235818)
川村 信三 上智大学, 文学部, 准教授 (00317497)
竹内 修一 上智大学, 神学部, 准教授 (60349016)
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Keywords | 人格 / 人間像 / スコラ学 / 中世 / 神秘思想 / 人文主養 / ルネサンス / 自由 |
Research Abstract |
2年間計画の本研究は「人格」概念の発展を、西洋中世の12世紀から初期近世の17世紀初頭まで解明することを課題とする。19年度には研究計画どおりに、13世紀後半の盛期スコラ学に重点を置きながら、12世紀初期スコラ学から中世末期14世紀初頭までの解明を本研究研究者の4つの研究小グループと全体会議の課題とした。重要な研究成果は以下のとおりである。既に12世紀において人格理解は二つの、区別されながら影響を及ぼしあう源流からなっており、つまり、神学的三位一体論を中心とし、ボエティウスによって定式化された存在論的人格概念(「知的本性の個的実体」)と、教父時代に形成された修徳的人間像による「尊厳」概念を核とする人格概念である。、後者の人間中心的倫理学的人格理解は12世紀修道院神学において人格の全体性と偉大さの観点のもとで展開され、自己認識・選択の自由と目的性・愛そのものの相互人格的性格などのモチーフから裏付けられたもので、思弁的三位一体論までにも影響を及ぼした。13世紀の盛期スコラ学では一方、ドミニコ会学派のトマス・アクィナスはアリストテレス形而上学の受容に基づき、人格の存在論的理解を目指して、個人の行為における自由な自己規定が実存的様相として人格概念の出発点とした。他方、フランシスコ会学派は人格理解において、道徳的性格ないし愛を重視し、ドゥンス・スコトゥスは、人格の存在論を意識論的に解釈し、人格に固有な完結性を「孤独」と神への自己超越との間の緊張関係において位置づけた。人格や魂の存在論的規定を意識的倫理的遂行に向かって理解する傾向は、神プラトン主義の影響のもとで、14世紀初頭でマイスター・エックハルトのドイツ語の著作の霊性にも見られて、近世初期を特徴付ける、人格理解の形而上学から意識論への移行を先取ったと言える。
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