2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世における人格理解の発展--スコラ学と神秘思想から人文主義へ
Project/Area Number |
19320004
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
RIESENHUBER K Sophia University, 文学部, 教授 (60053633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 直子 上智大学, 文学部, 准教授 (60296879)
長町 裕司 上智大学, 文学部, 教授 (90296880)
JOSEPH O'Leary 上智大学, 文学部, 准教授 (50235818)
川村 信三 上智大学, 文学部, 准教授 (00317497)
竹内 修一 上智大学, 神学部, 准教授 (60349016)
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Keywords | 自己認識 / 人格 / 主体 / 唯名論 / 中世哲学 / 神秘思想 / 反省 / デカルト |
Research Abstract |
二年間計画の本研究は、西洋中世における人格理解を十二世紀後半から十七世紀初頭まで解明することを目標とした。二年目の二十年度には前年度の研究成果をふまえ、計画通りに十三世紀末・十四世紀スコラ学と哲学的神秘思想から十五・十六世紀人文主義を経て十七世紀初頭近世哲学までの時代を研究し、最も重大な研究成果として以下のとおり形而上学的・神学的人間理解から近代的主体としての人格概念への移行を一貫したかたちで理解することができた。十三世紀後半のアヴェロエス主義的知性単一説への反論として、アウグスティヌス的自我論と新プラトン主義的精神論を背景に、個人の精神的自己経験が直接的所与性と認識の原理として反省されること(オリヴィ;ドゥンス・スコトゥス)によって、哲学的認識の原理への問いが形而上学的精神論から個人の反省の確実性を基盤とする認識論へと移った。それによって認識の機能を古典的・中世的アリストテレス主義にあるように認識の対象ないし志向的内容に求めるのではなく、主体(subiectum)の認識行為によって裏付けるになる。それと同時代に十四世紀のドミニコ会学派(エックハルト;ゾイゼ)の神秘思想において対象世界からの離脱と個人の内面への還帰が超越との関係の原理として承認され、さらにオッカム流のイギリスの唯名論、また人文主義(クザーヌス;ピコ・デラ・ミランドラ)において意識の自己探求が単なる認識行為というより、自由意志による行為として理解され、十六世紀に人間のこの自由は宗教改革者の唱えた予定論に対して弁護され(エラスムス)、フランス(モンテーニュ)において超越関係の問題から切り離され、さらに十七世紀前半のスペインの新スコラ学(フルタド・デ・メンドザ、デ・ルゴ、デ・アリアガのイエズス会学派)によってデカルトと同様、しかもデカルトの直前に個人的主体の自己認識が哲学の明証的で絶対確実な原理と基盤として、承認されるに至った。
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