2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19320024
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
喜多崎 親 Hitotsubashi University, 大学院・言語社会研究科, 教授 (90204883)
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Keywords | ラファエッロ / プリミティヴ / ラファエル前派 / 中世回帰 / デューラー / フラ・アンジェリコ / ナザレ派 |
Research Abstract |
2010年3月末に連携研究者の出席を得て21年度の研究報告会があり、各研究者によって以下のような報告がなされた。()内は担当者。なお堀川は体調不良のため書類提出による参加となった。 フランス(喜多崎):19世紀の前半にフラ・アンジェリコの様式のいかなる点が着目され、それが規範と見なされるようになったか。また19世紀にフラ・アンジェリコ様式を選択した作品がどう評価されたか。イギリス(山口):ラファエッロ前派のイタリア・プリミティヴ受容は単なる様式の模倣ではなく、イデオロギー的なものであったため、実際にはグループ内での差異や対立までもが指摘できる複雑な状況であった。イギリス(堀川):世紀末のテンペラ技法の復興は、単なる技法への着目ではなく、中世回帰を踏まえた新しい価値の発見であった。ドイツ(尾関):アカデミズムからの離反として捉えられがちなナザレ派は、実際には「中世」的主題によってドイツのナショナリズムと連動し、モニュメンタルな作品を通じて新たなアカデミズムを形成していた。ドイツ(佐藤):デューラー・ルネサンスの射程は広く、ドイツのみならずイギリスのヒリアードにも指摘されうる。イタリア(松原):19世紀イタリアのプリミティヴィスムへの回帰にとって重要な意味を持ったビアンキーニのテキスト「諸芸術における純粋主義について」の注解。 ラファエッロ以前への回帰現象は通常様式選択として論じられるが、単に様式の問題を超え、各国の状況と結びついて多様な展開を遂げていたこと、また各国で理論としての立場と、実制作との間に乖離が認められることが明確になった。
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Research Products
(6 results)