2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19320046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中地 義和 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50188942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩川 徹也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00109050)
月村 辰雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50143342)
塚本 昌則 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (90242081)
野崎 歓 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (60218310)
マリアンヌ シモン=及川 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (70447457)
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Keywords | 仏文学 / 旅行記 / フランス語圏文学 / ポストコロニアル / 虚構化 / 自伝 / 声 / ユートピア性 |
Research Abstract |
本研究二年目にあたる平成20年度は、代表者と分担者が本研究開始時以来の成果を持ち寄り、旅行記と歴史文化的諸条件との関わりを具体的に検討した。10月にはフランス語圏の三人の専門家(ジュネーヴ大学助教授フレデリック・タングリ氏、パリ第四大学教授ソフィー・バッシュ氏、フランス国立科学研究センター研究員ナタリー・モーリヤック=ダイアー氏)を共同研究者として迎え、国際研究集会「旅行記から文学作品へ」を組織した。前近代の旅行記(ベルニエ)、ロマン派の旅行記(ネルヴァル)、19世紀末-20世紀初頭の旅行記(マスペロ、プルースト、ヴァレリー)、現代の旅行記(ル・クレジオ)の代表的作品をそれぞれ選び、旅行記がいかに歴史的条件に規定されるか、また、旅行の記録はいかにして文学作品たりうるかについて議論を重ねた。その結果、前近代から近代への旅行記の変質は「文学」概念の変質とある程度併行的な軌跡をたどるが、旅行記に固有の記録性、断片性、偶発性が完全な虚構化や物語性に抵抗すること、また、近代の旅行記はしばしば虚構(小説)と組み合わさって、文学作品の生成を実存的角度から照射する機能を果たすことが、多数の実例とともに浮かび上がってきた。研究代表者はまた、6月にパリ第四大学で開催されたピエール・ブリュネル教授退官記念シンポジゥム「声(La Voix)」に招待され、旅行記『ロドリゲス島への旅』を含む、作家ル・クレジオの父祖の地モーリシャスにちなむ作品群を扱う発表を行ない、小説と旅行記におけるナレーションの偏差を考察した。
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