Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玄 幸子 関西大学, 外国語教育機構, 教授 (00282963)
木津 祐子 京都大学, 大学院・文研究科, 准教授 (90242990)
大西 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (10272452)
松江 崇 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90344530)
|
Research Abstract |
本研究の柱の一つである「存在文」について問題意識と観点を研究分担者間で共有し,史的資料を対象に,言語事実の詳細な観察と分析を行い,存在文の歴史的変容について従来指摘のない新たな知見を獲得した。具体的には,木村が提示した現代中国語存在文の諸類型の意味及び構造上の特徴と対照させつつ,大西は古代漢語における「有」字存在文について,松江は中古漢語における「有」字存在文について,玄は近世漢語における「有」字存在文についてそれぞれ観察と分析を行った。その過程で,大西は,古代漢語の『論語』においては「所有文」を含む「限量的存在文」(金水敏2006)が用例の大部分を占め,「リアルな空間におけるリアルな<非既知>的事物の存在を言い立てる」(木村2007)現代中国語タイプの「空間存在文」が極めて未成熟であったこと,一方,松江は,中古漢語では「空間存在文」の萌芽が見られることなどを明らかにした。こうした共通テーマをめぐる共同研究と平行して,昨年度に引き続き,それぞれの研究者が分担する時代分野を対象に,資料の収集と分析を通して基礎的研究の充実を図ると同時に,漢語の汎時的普遍性を視野に収めつつ,以下の研究を行った。木村は,近代以前の中国語における疑問詞研究への貢献を意図しつつ,現代中国語の疑問詞の意味機能についての考察を行い,新たな視点を提示した。大西は,古代漢語の助動詞「可」とヴォイスとの関わりに関する考察を行った。玄は,近世漢語(口語)研究の一環として敦煌文書の原資料調査を行い,その成果の一部を「宋代社会における『佛説天地八陽神呪経』の受容について-P.3759から見えるもの」として公表した。木津は,近代漢語研究の一環として,清代に琉球で編纂された官話課本『白姓』についての実証的考察を行い,琉球通事に行われた官話の実態の一端を明らかにし,『白姓』をはじめとする当時の各種課本の資料的位置づけを明確にした。
|