2010 Fiscal Year Annual Research Report
中国語の構文及び文法範疇形成の歴史的変容と汎時的普遍性―中国語歴史文法の再構築-
Project/Area Number |
19320057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 英樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20153207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木津 祐子 京都大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90242990)
玄 幸子 関西大学, 外国語教育機構, 教授 (00282963)
大西 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (10272452)
松江 崇 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90344530)
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Keywords | 上古中国語 / 語順 / 有界性 / 老乞大 / 漢訳仏典 / 長崎唐通事 / 存在構文 / 琉球久米村通事 |
Research Abstract |
本研究課題の柱として重点的に進めてきた存在文、ヴォイスおよび語順に関する研究を中心に、共同討議を重ねつつ、所期の目的である「中国語の文法事象の歴史的変容(多様性)と汎時的普遍性の究明」につながる複数の実証的または理論的成果を上げた。 大西は、上古中国語における存在構文・使役構文の考察をさらに深めた。特に「NP1+有+NP2」構文が、外形的特徴をほとんど変えることなく所有構文から時空間存在構文へと拡張したことは、言語横断的に見ても極めて特異であり、HEINE1997に代表される所有構文の文法化に関する先行研究が全く想定していないケースであることを発見し、類型論に大きく貢献する成果をあげた。松江は上古中国語の否定文における代名詞目的譜の動詞前置と動詞後置の現象について考察し、前置か後置かの語順を決定する要因として「非現実性」「有界-無界」という機能概念が関わっていることを明らかにした。さらに中古中国語文法研究の一環として「漢訳仏典言語の文法史資料としての価値」についての調査と考察を行い、『六度集経』についての新たな知見を公表した。玄は、近世中国語口語を反映する李氏朝鮮期の中国語テキスト『老乞大』の諸版本に現れる「有字文」を調査し、資料中の9%が現代譜法と同じ特徴を有し、従来特殊とされる10%についても歴史的変遷を必ずしも反映するものではないことを指摘した。木津は、近世中国語文法研究の一環として、18世紀の中国語通訳音である長崎唐通事と琉球久米村通事が編纂した中国謡教本の比較を行い、両者の間には、テキスト編纂の上で、前者が長江中流一下流域の官話特徴を傭えた中国謡の文体と長崎(日本)土着の道徳意識を取り入れ、後者が華南方言の特徴を反映する宮話文体と中国人の典型的道徳観をと取り入れるという明確な相違が存することを明らかにした。木村は。歴史文法研究を背景とする現代中国語研究の一環として、「時空間存在文」の意味的・構造的及び機能論的特徴を明らかにし、本構文を所有構文の一部として位置づけ、所在構文との対立を明確に特徴づけた。 上紀の成果は、すべて、下記「11.研究成果」に記す学術論文および学会発表・招待講演などを通して公表されている。
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Research Products
(13 results)