2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘレニズム時代エジプト領域部における文化交流と二言語併用社会の研究
Project/Area Number |
19320096
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
周藤 芳幸 Nagoya University, 文学研究科, 教授 (70252202)
|
Keywords | エジプト / 採石場 / ヘレニズム / 文化交流 / バイリンガル / プトレマイオス朝 / ギリシア語 / デモティック |
Research Abstract |
平成19年度に行ったザウィエト・スルタン採石場のグラフィティの登録結果をさらなる現地調査を通じて検証するとともに、新たに確認したグラフィティについては、昨年度と同様にデジタル・カメラによって記録・実測を行った。とりわけ、谷の西側の横穴部、及び南側中段部の横穴にはグラフィティが良好な状態で遺存していたため、透明なビニールシートへの実寸の転写を行った。横穴部では物理的に写真撮影や実測が困難なことが多く、シートへの転写はグラフィティ解読のための有効な方法となることが明らかになった。 また、ザウィエト・スルタン採石場の北約10キロの地点にあるアコリス遺跡の南採石場でも、ザウィエト・スルタン採石場のグラフィティとまったく同一の様式で情報を記録したデモティック及びギリシア語のバイリンガルのグラフィティが新たに発見されたため、その調査を並行して行った。ここでは、天井面と床面の加工痕が明瞭に残っているため、グラフィティに記録された情報と採石作業とを関連づけるための有力な手がかりを得ることができた。この調査を行うにあたっては、アコリス遺跡で調査を行っている辻村純代氏から助言を受けた。また、グラフィティの解読にあたっては、昨年度と同様に、ギリシア語パピルス文書に造詣の深い高橋亮介氏の協力を得た。高橋氏の協力を得て行った調査の成果の一部については、平成20年5月11日に島根大学で開催された日本西洋史学会第58回大会において、「プトレマイオス朝エジプトの採石場遺跡と二言語併用グラフィティ」と題して報告を行った。
|