2008 Fiscal Year Annual Research Report
藩政文書・地域文書の体系的分析による前近代日本社会到達形態の解明
Project/Area Number |
19320103
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉村 豊雄 Kumamoto University, 文学部, 教授 (90182823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三澤 純 熊本大学, 文学部, 准教授 (80304385)
稲葉 継陽 熊本大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (30332860)
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Keywords | 稟議制 / 合議 / 地域社会 / 村社会 / 公共性 / 政策形成 / 百姓 / 領主制 |
Research Abstract |
本研究の中心は、熊本藩の藩庁(奉行所)の民政・地方行政担当部局の帳簿で、近世初期から明治初年に至る総数400冊の分厚い帳簿群たる「覚帳」の解析にある。そして我々は、2年間にわたって「覚帳」の全体的な点検作業行い、「覚帳」の全体構成、諸段階を大きく見通す検討を行った。そして次のような見通しを得た。すなわち、日本近世の領主制が農村社会の自律的運営能力に立脚する方向で、18世紀後半期以降、次第に農村社会からの上申事案=上申文書の処理を業務とする割合を強め、ついには農村社会からの上申文書を中央機構における稟議制の起案書として、民政・地方行政に関わる主要な政策形成を行うに至るという、従来創造もされてこなかった19世紀、幕末期の行政段階を示すものである。我々は、こうした明確な見通しを理論化しつつ、「覚帳」の系統的解析を行い、地域文書と対応させることで、農村社会段階で解決・処理される事案の性格、処理メカニズム、藩庁部局に上申される事案の性格、政策形成メカニズムの検討に入った。具体的には藩領農村のなかで零落問題、自然災害が連続・深刻化する手永(郡と村の中間行政区域)を5ヵ所選び、「覚帳」によって当該5手永に関わる事案を系統的に集積し、問題の手永に、いかなる政策が重積していくのかをデータとして出した。そして、この時系列政策データに村の庄屋文書、手永の惣庄屋文書の分析データを対応させ、農村をめぐる政策形成における村、手永、郡、藩庁それぞれの関わりについて検討し、最終的には、農村社会に関わる主要な政策形成が、むら・手永の農村段階で実現されていたことを提示する。
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Research Products
(4 results)