2009 Fiscal Year Annual Research Report
植民地期東アジア民衆諸宗教の伝播と交流~情報メディアの分析
Project/Area Number |
19320112
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
武内 房司 Gakushuin University, 文学部, 教授 (30179618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
並木 頼寿 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80155986)
菊池 秀明 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20257588)
今井 昭夫 東京外国語大学, 総合国際学研究院, 教授 (20203284)
孫 江 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (40329529)
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Keywords | 民衆宗教 / カオダイ教 / 世界紅卍字会 / 斎教 / ベトナム / 先天道 / 香港 / 台湾 |
Research Abstract |
本年度は、研究代表者・分担者・連携研究者・研究協力者がこれまでの収集調査してきた各地域の宗教事情および宗教文献の整理と分析にあたるいっぽう、外部研究者を招いて共同研究会を開催した。2009年5月には、オランダ・ライデン大学中国学研究所教授バレンデ・テレ・ハーレ氏に、中国湖南省を事例とした民衆宗教に関する講演をお願いし、神おろしの儀礼である扶鸞の社会的広がりについて新知見を得た。また、8月には台湾の民衆宗教の一つ斎教について、補充調査を実施した。 今年度の特筆すべき成果は、シンガポール国立大学教授プラセンジット・ドゥアラ、ベトナム南部持続発展研究所研究員チャン・ホン・リエン、香港・中文大学准教授游子安、台湾・南台科技大学准教授王見川各氏を招聘して、「越境する近代東アジアの民衆宗教~移動・交流・変容」と題する国際シンポジウムを開催したことである(学習院大学、10月17日)。ベトナム華人社会に広東から伝播した先天道が根づいていることを現地調査に基づいて明らかにした游子安報告、植民地期及び戦後の台湾に世界紅卍字会が定着していく事情を教団内部の宗教文献を用いて解明した王見川報告から、民衆宗教の地域や国家を超えた活動の広がりが確認できた。また、ベトナム国立第二文書センターのアーカイブズを用いて植民地期農民運動とカオダイ教など民衆宗教との関わりを論じたチャン・ホン・リエン報告、さらにはアジアの近代において宗教の果たした役割を、民衆宗教を射程に入れつつ論じたドゥアラ報告等をつうじて、近代東アジアにおいて民衆宗教の果たした多面的役割を改めて確認できた。フロアからも活発な質疑応答がなされ、東洋史・宗教学・地域研究等の枠組みを超えて交流を深めることができ、所期の目的を達成することができた。これらの報告は、プロジェクトメンバーがこれまで蓄積してきた研究成果と合わせて、『越境する近代東アジアの民衆宗教~中国・台湾・香港・ベトナムそして日本』と題して明石書店より刊行された。
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