2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世墓と人口史料による社会構造と人口変動に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19320123
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
関根 達人 Hirosaki University, 人文学部, 准教授 (00241505)
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Keywords | 墓標 / 過去帳 / 近世陶磁器 / 歴史人口学 / 日本海交易 / 松前 / 蝦夷地 / 和人地 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き、北海道松前町旧福山城下町において近世墓標の悉皆調査を実施し、全墓標の調査を完了した。両年度にわたる調査で調査した近世墓標数は5517基にのぼり、墓標に刻まれた被供養者数は11602名を数える。これまでに一つの城下町に存在する全ての近世墓標を調査した事例はなく、貴重なデータといえる。調査した墓標のデータについては全てコンピュータへの入力し、昨年度の分と併せて基本的な分析を終えている。さらに今年度は、昨年度行った寺院過去帳(3ヶ寺13581名分)の調査に引き継き、軒別過去帳の調査をし、戒名・没年を手がかりに墓標に刻まれた被供養者との照合をおこない、人物の特定に努めた。また、墓標の現地調査の際、蔵骨器など墓地に散布する近世陶磁器の表面採集を併行して行った結果、松前など北海道内の和人地では19世紀題にひろく火葬が行われたことが判明した。蔵骨器には中甕が使われており、それらは和人地・蝦夷地を問わず、広く北海道内に分布しているが、これまでは産地不明とされてきた。生産地資料と対比した結果、それらの中甕は北部九州で作られた上野・高取系製品であることが判明した。それらの中甕には塩や味噌を入が入れられ、北前船で蝦夷地向けに移出された可能性が高い。本研究では、墓標や過去帳を手がかりとしてヒトの移動を、墓標に使われた石材を通してモノの移動を検討してきたが、それに加えて陶磁器からもモノの移動を検討することが可能となった。
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