Research Abstract |
本年度においては,まず,コーポレート,ガバナンスと労働法の関係に関する裁判例を分析整理した。また,集団的労使関係法が従業員のコーポレート,ガバナンスへの関与の在り方をどのように規定しているのかを検討し,労働法の体系的分析の中に織り込んで公表した(法学教室325号〜329号)。また,日本のコーポレート,ガバナンスと労働法システムの関係に関する考察を諸外国の研究者との共同研究の成果物である書籍(ドイツにて出版)に発表するとともに,アメリカの比較労働法,労働政策雑誌にも掲載した。さらに,コーポレート,ガバナンスとCSR(企業の社会的責任)およびSRI(社会的責任投資)の関係について,諸外国の情勢をサーベイするとともに,日本の状況についても分析を行った。加えて,CSR,SRIが労働法にとっていかなる政策的意義をもたらすのかについても検討を行った。この成果についても,日本で刊行された記念論集に寄稿することで公表した。このほか,従業員を企業の構成員と見るのか,単なる外部的要素と見るのかにかかわる雇用保障問題について,経済学者と共同で学際的考察を行い,書籍に公表した。 研究分担者および協力者は,コーポレート,ガバナンスにおける個別テーマとして,(1)企業の差別某氏に関する責任についての基礎的考察を深める作業,(2)賃金水準に関する法による規制と市場による規制,それらと生活水準保障の関係についての比較法的考察を深める作業,そして(3)過労死,過労自殺の発生メカニズムとこれに対する企業の責任についての考察を,それぞれ進めることができた。
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