Research Abstract |
今年度は,法曹の質の社会科学的な測定のために全国の弁護士全員を対象として実施したピアリヴュー法の成果を日本弁護士連合会シンポジウムで報告し,『「法曹の質」の検証』(商事法務) として出版した.国民の間の弁護士についてのイメージも弁護士の質についての測定の一つの指標であり,それを計測するための質問票を作成して,インタネット調査の手法で2000のデータを集めた.このデータの分析結果の一部は2009年度の法社会学会(明治大学法学部)で報告することになっている.弁護士の社会的地位の評価を,裁判官,検察官,国会議員,県知事,県会議員,司法書士,税理士,警察官などとの比較で測定するとともに,弁護士の質に関わる諸要素について一般国民の評価を計測した.テンタティヴな分析によれば,クラスタ分析の結果として弁護士との社会的距離が比較的小さい集団において,弁護士についてのイメージが非常の悪いなどの興味深い知見が得られている。さらに,弁護士のパフォーマンスを客観的(間主観的)に測定するために,熟練の弁護士延べ20名の協力と,最高裁判所事務総局,並びに横浜地方裁判所の協力を得て,横浜地方裁判所の民事訴訟記録からランダム抽出した訴訟記録について(双方代理人付き事件),熟練の弁護士によるパフォーマンス評価(訴状,答弁書,準備書面,証拠収集,当事者尋問・証人尋問の主尋問と反対尋問の技法などの評価)を実施した.これを予備調査として,次年度は本格的な弁護士パフォーマンス調査を実施する方向で最高裁判所と協議を進めている.
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