Research Abstract |
今年度は,2009年1月に実施した弁護士イメージ調査のデータ・クリーニングと集計,および統計学的分析をまず行った.この研究の成果は2009年7月17日に日本弁護士連合会でのシンポジウムで報告した.さらに2010年4月21日の「六本木研究会」でも報告した.法曹の質の概念の中の,法曹プロフェッションに対する国民の評価の指標としての弁護士イメージは,弁護士の側が従来持っていた自己のプロフェッション・イメージとは大きく異なり,在野法曹,庶民の味方,弱者の味方等としてはイメージされておらず,むしろ,金持ちの味方のずるがしこい人種,というものに近いことが分かった.法曹養成の観点から重要な知見として,弁護士の自己イメージとは異なり,国民は弁護士という職業にそれほど「あこがれ」をいだいていないことも分かった.これらの成果は『弁護士イメージの研究』(商事法務)として単行本としてまもなく出版される予定である.この延長線上の研究として今年度はさらに,弁護士イメージ調査結果の分析と並行して,弁護士ニーズや弁護士報酬に関するインタネット調査を実施した.これらの研究成果は2010年5月のLaw & Society Association Annual Meeting(Chicago, IL, USA)で報告することに成っている. さらに,今年度は弁護士のスキルや能力を現実的に測定するために,熟練の弁護士延べ100名の協力を得て,最高裁判所の許可のもと,東京地方裁判所の協力を得て,熟練弁護士による弁護士評価を実施した(2010年3月).すなわち,2007年新受事件の中で既に終了した事件で,判決または和解で終了し,原告被告双方に弁護士が訴訟代理人としてついていて,裁判所記録上「その他」事件に分類されておらず,比較的充実した事件をランダムに抽出して,2名の熟練弁護士が相互に独立して当該民事訴訟記録を読んで,訴状・答弁書,準備書面,当事者尋問(主尋問,反対尋問),証人尋問(主尋問・反対尋問)等のスキルと能力を評価するという研究であり,190件について実施した.この研究成果も商事法務から単行本として刊行する予定である.
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