2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代米国における政党変容-「決定的選挙なき政党再編」における予備選挙の機能
Project/Area Number |
19330029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 文明 東京大学, 大学院・法学政治研究科, 教授 (00126046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 泰 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (40190425)
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Keywords | アメリカ / 共和党 / 政党再編 / 予備選挙 / 民主党 |
Research Abstract |
現実の動きは早い。2009年に登場したティーパーティの動向は予想を越えて大きな影響力を獲得したが、その勢いは、共和党予備選挙においてもっとも強く代表された。その意味で、本研究の基本的に視角の正しさは現実によって証明されたといえる。 最終年度である本年度は、すでに昨年度に刊行した『アメリカ現代政治の構図』にれ自身に研究の総括という意味が込められている)の成果を踏まえて、2010年中間選挙におけるティーパーティの役割について、共和党予備選挙との関連で分析した。ティーパーティは結局のところ、第三政党ではなく、共和党の中で活動し、共和党の予備選挙に候補者を擁立して、自らの流れの人物を同党公認候補にしようと試みた。このプロセスを経て共和党は確実に右傾化し、現在進行中の予算交渉においても明らかなように、より徹底的に小さな政府を追及する政党に変容した。 同時に、オバマ政権が打ち出すさまざまな政策とオバマ政権自身が、有権者や議員にどのように受け入れられているかについても分析した。その結果、イデオロギー的分極化は政治家=議員レベル、あるいは政治団体=利益団体レベルにおいてのみならず、有権者レベルにおいても深く浸透していることが解明できた。結果的にオバマ大統領は、現代では、民主党支持者と共和党支持者の間での支持率がもっとも乖離している大統領となってしまった。 なお、本研究は当初想定も予想もしていなかったアメリカ政治を支えるインフラストラクチャーについても研究が及び、シンクタンク、メディアなどを含む当該領域においてもイデオロギー的分極化が進行していることを確認した。このような新しい領域にまで踏み込むことができたのは、望外の喜びである。
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