2007 Fiscal Year Annual Research Report
コンパクトシティ対田園都市:少子高齢化時代における都市・地域の経済分析
Project/Area Number |
19330048
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 達朗 Nagoya University, 環境学研究科, 教授 (00183319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬古 美喜 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60120490)
中村 良平 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20172463)
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Keywords | 経済集積 / 都市成長 / 経済構造 / 課税競争 |
Research Abstract |
多くの先進国では高齢化と人口減少が問題となっている。これらを背景として「コンパクトシティ」という概念は、人々がより高密度で集住することにより、自動車など環境面の費用や公的サービス費用を削減しようとするものである。これに対して、人口減少によりもっと広い居住空間を享受すべきとする田園都市を主張するものもある。これらは規範的な主張であるが、本研究では、記述的なモデルを用いて、人口減少や輸送の機会費用の増加が果たして空間的な集中をもたらすのか、分散をもたらすのかについて分析を行った。具体的には、面積的に非対称な2地域を想定し、広い居住空間の愛好を表現するために土地と資本を生産要素とする住宅産業を明示的に取り入れた。また、近年の地域統合などによって激しさを増している地域間競争を表現するために資本に対する課税競争モデルを、差別化された財による集積の経済を考慮して分析し、より高い実質利子率を目指して瞬時に地域間を移動する資本と、より高い厚生水準を目指して、比較的時間をかけて進行する労働(家計)の移動を再帰的なシミュレーションによって再現した。これにより、従来の新経済地理学の結果とは異なり、環境問題を始めとした輸送費用の増加によってむしろ集住が起こること。一方で、人口の減少は分散をもたらすため、人口減少と輸送費用の増加が同時に進行する場合には、相反する力が働くことを明らかにした。また、一方の地域への集住が起こる場合には、その面積の大小によって厚生水準が大きく変化するため、居住地域のコンパクト化は自由な市場と地域間競争の結果としても起こりうるものの、過度なコンパクト化はむしろ社会厚生を悪化させることを示した。
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