2008 Fiscal Year Annual Research Report
コンパクトシティ対田園都市:少子高齢化時代における都市・地域の経済分析
Project/Area Number |
19330048
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 達朗 Nagoya University, 環境学研究科, 教授 (00183319)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬古 美喜 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60120490)
中村 良平 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20172463)
|
Keywords | 経済集積 / 都市成長 / 経済構造 / 課税競争 / 人口移動 |
Research Abstract |
グローバリゼーションの進展により、各地域はこれまでのような国内の競争だけでなく、国際的な競争に直接晒されることになった。特に、新経済地理で協調されるような独占的競争が主要な産業分野に一般なものとなったこともあり、従来にも増して集積の経済効果が有意に現れるようになってきている。この結果、交通技術の革新による輸送費用の低減と石油等の枯渇によるエネルギー価格上昇の相反する効果の強弱如何によって、今後世界的に集中・過疎の2極化がさらに進むか、あるいは分散化するのかは、世界的な経済構造から見ても非常に重要な問題と考えられる。ところで、新経済地理の分野においても、輸送費の低減に伴い、クルーグマン(1991)のモデルによれば集中が進むのに対し、移動できない労働者を考慮しないヘルプマン(1998)のモデルによればむしろ分散が進むというように、想定する条件によって相反する結果が得られている。そこで、本年度はヘルプマンのモデルの拡張として、家計の公共財に対する選好の違いが人口の集中・分散に与える影響を分析した。昨年構築したモデルと同様に土地と資本を生産要素とする住宅産業を明示的に取り入れた。また、地域間競争を表現するための資本に対する課税競争と、差別化された財による集積の経済を考慮してシミュレーションによって分析した。これにより、家計の公共財に対する選好が一様分布で各地域の政府がそれぞれの住民の中位の選好に基づいた厚生最大化の税率の決定およびその税収による公共財の提供を行った場合、ヘルプマンとは逆に、クルーグマンの結果と同様になることを示した。このことは、クルーグマンのように移動不可能な労働を仮定しなくても、より実際に近いと思われる選好の違いを仮定すれば、クルーグマンが示したように輸送費の低減に伴う集中・過疎化現象が生起することを示したもので、意義深いものと考えられる。
|
Research Products
(6 results)