2007 Fiscal Year Annual Research Report
経済集積の検出およびその空間パターン認識に関する実証分析枠組の構築
Project/Area Number |
19330049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 知也 Kyoto University, 経済研究所, 准教授 (70283679)
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Keywords | 集積の経済学 / 空間経済学 / Number-Average Size Rule / 階層原理 / 産業立地 / 都市規模 / ランク=サイズルール / 集積検出 |
Research Abstract |
本研究の目的は、個々の集積の地図上での検出を可能にし、それを元に集積群全体の空間パターンの認識を行うという、経済集積の実証研究において最も基礎的な領域における分析手法を体系化することである。本年度は、その一連の分析体系の基礎となる、地図上で集積を特定する情報/統計理論に基づく手法の開発、および、本プロジェクト期間に利用する数値解析環境の整備を行った。 従来、経済集積の実証分析における「集積」の捉え方は、人口あるいは産業(事業所・労働者)の空間分布と、ある特定の基準分布(例えば可住地面積上の一様分布)の乖離を、スカラー値により「集積度」として評価するものであった。しかし、スカラー指標では2次元空間上にて形成される集積の空間パターンを特定化することはできない。これに対して、本研究では、単純な確率的立地モデルを背景とした情報量基準を定義し、地図上の複数の集積を同時に検出する方法を開発した。これにより、個々の産業あるいは人口の集積は具体的に地図上で可視化され、それを元にした空間パターン認識が可能となった。さらに、検出された集積群の空間パターンを用いて、古典的な経済地理学や「新しい経済地理学」において従来から示唆されてきた人口・産業集積パターンに関する法則性(都市の産業構造における「階層原理」や「NAS法則」)の再検証を行った。このような集積の広域的なパターン、あるいは空間分布の性質について、体系的な実証分析を行うための基礎を構築した点において、本年度の研究成果は先駆的であり、以降の空間経済学の単純系から複雑系モデルへ発展する理論研究の実証的基礎を築く上で重要な貢献となると考えられる。 集積検出手法に関する成果は、2007年12月の応用地域科学学会年次大会にて報告され、人口・産業集積パターンに関する法則性の検証に関する成果は、研究協力者の錦見・スミス両氏との共著として、2008年2月に、Journal of Regional Scienceの「集積の経済学の実証分析」に関する特集号に掲載された。
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