2008 Fiscal Year Annual Research Report
婚姻の行動モデル解明と少子化対策としての婚姻促進政策のあり方に関する実証的研究
Project/Area Number |
19330053
|
Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
八代 尚宏 International Christian University, 教養学部, 教授 (80245787)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 由起子 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50264742)
鈴木 亘 学習院大学, 経済学部, 准教授 (80324854)
|
Keywords | 婚姻行動 / サーチモデル / 留保生活水準 / マッチング行動 / 非正規化 / 保育市場の規制緩和 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度実施した、婚姻関係の大規模アンケートについて追加調査を行い、サンプル数を増やした分析を行った。アンケート調査の内容は、記述統計やクロス表を報告書としてまとめたところであるが、(1)男女間における具体的行動や意識の非対称性(結婚に求めるものの期待誤差が大きい)、(2)就職行動と婚姻行動の経済学的な類似性(留保賃金にあたる留保生活水準の存在とそれに影響する各要因の抽出、サーチモデルの理論的整合性)(3)経済的要因が婚姻行動に与える影響の深刻化(非正規化、低所得化が婚姻行動の障害となりつつある)などが、明確な傾向として現れている。今年度は、その中から特に、近年の女性の晩婚化・未婚化について要因分析を行った。その結果、父親の所得が高いほど女性の20代における初婚確率が高く、結婚市場で有利であることが明らかとなった。また、独身者の方が、将来の配偶者に希望する所得が高く、このことが晩婚化・未婚化の要因となっていることがうかがえる。加えて、階層意識が高いほど、20代の初婚確率が低く、独身者は将来の配偶者に希望する年収が高くなることが明らかとなった(山本(森田)論文)。 また、大規模アンケートを用いた分析ではないが、既存の労働市場データを用いた分析により、日本の出生率の低下が、男性は仕事、女性は家事・子育てに特化することを前提とした日本的雇用慣行と密接な関係があること(Yashiro,“Economic Factors in the Declining Birth Rate"論文)、少子化対策は、男女が共に働き、共に子育てのできるワークライフバランスや男女共同参画社会の目指すことと共通点が多いこと(八代「ワークライフバランスを通じた女性の人材活用」論文)といった結果が得られている。 それ以外では、婚姻後の出産行動に結びつく子育て支援(保育サービス)の市場化の影響を行い、規制緩和によって、追加財政支出を伴わなくても保育所の大幅供給増が可能であることが示された(鈴木論文)。また、公刊成果物になってはいないが、安部により、出産行動や賃金に関する多くのディスカッションペーパーが執筆された。
|
Research Products
(11 results)