2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19330111
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
佐藤 恵 J. F. Oberlin University, リベラルアーツ学群, 准教授 (90365057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 智樹 富山大学, 人文学部, 准教授 (80312924)
三井 さよ 法政大学, 社会学部, 准教授 (00386327)
崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
荒井 浩道 駒澤大学, 文学部, 専任講師 (60350435)
井口 高志 信州大学, 医学部, 専任講師 (40432025)
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Keywords | ケア / 承認 / セルフヘルプ・グループ / 感情労働 |
Research Abstract |
「研究実施計画」に記載の通り、(1)「在宅介護と感情労働」、(2)「セルフヘルプ・グループ研究」、(3)「被害者支援研究・アドボカシー論」、(4)「セラピー文化と心理主義の発展」の各テーマについて調査・研究を積み重ねた。それによって、「研究の目的」に掲げた、脱専門化を志向する対人援助をもたらす社会構造と現場での課題について、諸成果が得られた。第一に((1))、高齢者介護・被災者ケアなどに関して、「反医療の立場をとること」や「支援を制度化すること」で事足れりとするこれまでの議論の一面的な見方を相対化し、医療的アプローチをも批判的に取り込んだ支援、制度からこぼれおちる当事者への「人として」の支援、ナラティヴ・アプローチを導入したソーシャルワークなど、新たな支援のあり方について社会学的に探究した。第二に((2)(3))、従来のセルフヘルプ・グループ研究においては、既存の専門的支援にないセルフヘルプ・グループの固有性として、体験的知識や社会的学習などが注目されてきたが、本研究では、そうした単なる情報伝達モデルの乗り越えを試みた。病い・死別・犯罪被害を経験する人々を事例とし、「物語」を鍵概念とした上で、苦しみの物語から異なる物語への劇的転換という素朴な把握を回避しつつ、語ること・聴くことの意義に関する新たな社会学的考察を行った。第三に((4))、「心」の尊重を標榜する心理主義への批判的な視座を打ち立てた。 本研究課題全体として、脱専門家された支援のあり方として制度から「こぼれ落ちる」困難経験者への支援を明らかにした。また、「心」・「関係性」をただ重視するだけではない支援の可能性も分析された。総体として、対人援助をめぐる新たな社会学的知見を提出しつつある。
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