2009 Fiscal Year Annual Research Report
「薬害HIV」問題経験の社会学的研究-ナラティヴ・アプローチから-
Project/Area Number |
19330122
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
種田 博之 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 講師 (80330976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蘭 由岐子 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (50268827)
桜井 厚 立教大学, 社会学部, 教授 (80153948)
中塚 朋子 奈良女子大学, 社会連携センター, 特任助教 (50457131)
本郷 正武 東北大学, 文学研究科, 助教 (40451497)
南山 浩二 静岡大学, 人文学部, 教授 (60293586)
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Keywords | 「薬害HIV」事件 / 血友病 / ライフストーリー・ナラティヴ |
Research Abstract |
本調査研究は、非加熱血液製剤によるHIV感染被害事件(いわゆる「薬害HIV」事件)について、当時の医療環境を知識社会学的に明らかにしながら(医師が何をあたり前のこととし、そのあたり前ことが如何にしてあたりまえのことになっていたのかを捉える)、ライフストーリー・インタビューの方法を使って、この問題に関わった医師と患者のナラティヴを分析し、この問題の全体像を把握することである。ライフストーリー・インタビューの方法を通してデータを収集した。また、アクティヴ・インタビューの方法からインタビューのトランスクリプトの分析と解釈をおこなった。そして、それを報告書としてまとめた(平成19~21年度科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果報告書「『薬害HIV』問題経験の社会学的研究-ナラティヴ・アプローチから-」(課題番号:19330122)、2010など)。 インタビュー・トランスクリプトの分析の結果、以下のことが明らかとなった。血友病の治療を先進的に行っていた、いくつかの中心的な病院の勤務医と、血友病の専門知識もなく、独習しながら血友病治療を行っていた地方の病院の勤務医とでは、血友病治療の状況が異なっていたことはもちろん、非加熱製剤に対する危険認識も大きく異なっていた。濃縮製剤が導入される前のクリオ製剤の評価ひとつをとっても、医療者によって認識が違うこと、さらには、HIVの発見に続く1980年代中葉までは、HIVの感染メカニズムもエイズの発症メカニズムも医療者によくわかっていなかった。HIV感染の「告知」という問題も、具体的な医師と患者の関係において再考すると、様々なHIV感染(抗体陽性)の伝え方が存在していた(「告知」という概念を一律に使うことは不適切であり、むしろそれを医師と患者のコミュニケーションの問題として再考することができるようになった)ことなどである。
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Research Products
(10 results)