2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本の社会事業の現代的特質に関する研究-社会・共同性を中心に-
Project/Area Number |
19330134
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Research Institution | Kinjo University |
Principal Investigator |
元村 智明 Kinjo University, 社会福祉学部, 講師 (60340022)
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Keywords | 社会事業 / 現代的特質 / 社会 / 共同性 |
Research Abstract |
平成21年度は、先行研究の到達点を踏まえ引き続き蒐集した史資料を通じて社会事業の現代的特質と共同性の議論を試みた。7月の研究会では、「大正少年法における『保護処分』-大正8年に行われた議論を主たる素材として-」(田中亜紀子)、「ストラスブルク制度と婦人方面委員-海野幸徳の主張を媒介に-」(今井小の実)の2報告がなされた。9月の研究合宿では「石川県における地域の組織化と社会改良」(元村智明)、「もう一つの民間救済と地方救済体制の成立-鳥取県における奨恵社の展開から-」(小池桂)、「大正期育児事業の展開(博愛社にみる)と若干の考察」(水上妙子)、「日露戦争後の感化救済事業とキリスト教」(細井勇)、「地方の私立感化院の公立化とその影響」(佐々木光郎)、「昭和恐慌下におけるキリスト教と農村社会事業」(杉山博昭)、「衛生から厚生へ-後藤新平における社会事業の形成」(田中和男)、「社会政策からみた社会事業 その2-戦前の議論から-」(池本美和子)の8報告がなされた。そして11月の研究会では、「社会福祉研究における科学認識について」(池田敬正)をもとに現代社会と社会事業・社会福祉について議論した後に、各自が論文執筆し2月に全体をまとめる最終報告の機会を設けて研究成果物に向けた議論を行った。従来の社会事業の成立時期・成立指標をめぐる解釈は限定的に捉えられて抽象化されたものであったが、実際の社会事業の形成と展開ではその範疇は非常に幅広く地域的取り組みにも差異を見出す結果となった。加えて、国民生活に対する国家介入や社会事業に対する国家関与の問題は、近代の自由主義的傾向ではない現代的特質であることが明らかとなった。その他、1890年創立の博愛社(大阪)の写真史資料を「博愛社蒐所蔵・写真史資料データベース集」(全322頁)と「映像でみる博愛社のあゆみと養護実践」(解説付き・DVD)を纏めた。
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