2010 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠期から出産後における親の子ども表象の発達的変化と親子相互作用との連関
Project/Area Number |
19330148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 利彦 東京大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (90242106)
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Keywords | 妊娠期 / アタッチメント / 子ども表象 / WMCI / 縦断研究 / 想像上の子ども / 家族の情動的雰囲気 / 母親の抑うつ傾向 |
Research Abstract |
本研究は、(1)妊娠期における母親の「想像上の子ども」に関する表象の質が、母親自身の成育歴に由来するアタッチメント全般についての表象や種々の社会文脈的要因等とのいかなる交絡作用を通して規定されるのか、また、(2)それが出産後にかけていかなる連続性や変化を示すのか、変化があるとすれば、その変化は子ども自身の気質的特徴や子育てを取り巻く社会文脈的要因等との関わりにおいて、いかにして生じるのか、さらに、(3)母親の子どもに関する表象やアタッチメント全般に関する表象の質は、母親の日常的状況における、どのような養育行動や情動表出の側面に特に現れ、また、今度はそれらを介して、いかに子ども自身のアタッチメント形成に通じ得るのか、についての解明を企図したものである。今年度は、最終年度にあたり、計画最後の家庭訪問による母子相互作用の観察と母親に対する面接・質問紙調査を行うと同時に、母親の妊娠期から子どもが出生後2歳に至るまでのデータについて総括的な分析を行った。その結果、母親の子どもに関する表象の質(WMCI : Working Model of Child Interviewによって測定される「安定型:子に関する描写が豊かで一貫性があり情緒的関与や受容が高い」、「非関与型:子への心理的距離が大きい」、「歪曲型:子に関する描写にまとまりがなく不安や葛藤の度が強い」)は妊娠期から子どもの出生後に亘って相対的に高い連続性を示す傾向が見出された他、それらが生後約3年間に亘る、様々な発達期の、母子相互作用の特質(情緒的トーンなど)や子ども自身の発達変数(アタッチメントの安定性や外在化・内在化問題傾向など)をある程度、予測することが明らかとなった。もっとも、その予測力は時間経過とともに弱まり、母子を取り巻く社会文脈的要因が徐々に(おそらくは母親の子ども表象に変化をもたらしつつ)影響力を強めることが示唆された。
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Research Products
(23 results)