Research Abstract |
ICD-10の診断基準を満たすうつ病性障害,または,抑うつ気分を主症状とする成人入院患者に対して,(1)抑うつ気分と人間関係の改善をねらった集団認知行動療法(CBGT)プログラム(対象者:男性40名,女性66名),および,(2)ストレス対処と再発予防をねらったCBGT(対象者:男性32名,女性72名)を実施し,その短期的効果と長期的効果を検討した.プログラムは,これまでのうつ病に対する個人認知行動療法をもとに,短期(5セッション)で集団形式を取って実施が可能となるよう新たに作成されたものであり,1グループあたりの定員を最大6名とし,トレーナー1名(心理士),サブトレーナー1~2名(心理士,および看護師)で集団を構成した.それぞれのプログラムについて介入前と介入後,およびフォローアップ期間後に,(1)はSIAS, FNE, SSS, BDI, QOL-26, (2)はCARS, TAC-24, SRS, BDI, QOL-26を用いて効果判定を行った.その結果,抑うつ気分と人間関係の改善プログラムは,短期的に社会的スキルに改善が認められ,抑うつ症状が減少していた.また,対人交流不安と他者評価不安,自信のなさにも改善が認められた.さらに,抑うつ症状に減少が認められた.一方,ストレス対処と再発予防をねらったプログラムは,ストレス対処については,コントロール感が増し,肯定的解釈・気ぞらしといったストレス対処行動の増大が得られ,いずれもQOLの改善が認められた.うつ病は生涯有病率が約15%であると言われ,潜在的な患者数は膨大である点を考えると,その治療法を確立することは緊急の課題である.我が国では非薬物療法としての心理療法の効果を検証した研究は立ち後れており,本研究の成果は,うつ病に対する有効な治療法を提供するための資料となると考えられる.なお,マニュアル,使用された教材等は,他機関での利用が可能となるよう別途資料集として作成されている.
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