2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトおよび霊長類がおこなう対象・身体・空間のイメージ操作の進化的理解に関する研究
Project/Area Number |
19330159
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (30335062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森村 成樹 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (90396226)
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Keywords | イメージ操作 / 霊長類 / 進化 / 身体 / 空間 |
Research Abstract |
H21とH22年度は、ヒト、サル、チンパンジーの3種で心的回点現象の実験を実施した。 1)ヒトの実験: 日本人と日本語能力1級の中国人留学生を対象に、平仮名と漢字の心的回転を行動および脳波を用いて検討した。日本人と中国人を比較したところ、日本人は漢字よりも平仮名のほうが早く認識できたのに対し、中国人は平仮名の認識のほうが遅かった。 脳波を測定したところ、心的回転を反映するPzでの振幅は日本人と中国人はとも回転角度に合わせて大きくなった。ただし、日本人のほうが回転に対応した波形の出現が早かった。漢字・平仮名がランダムに提示される状況において、中国人の平仮名に対する表象が弱いために、このような反応の遅さを反映していると考えられた。 2)サルの実験: サルで心的回転の実験を実施した。5個体ではじめたが、途中で1個体が死亡し、他個体も感染症のため、実験が停止となった。そこで、研究期間を延長した。実験では、サルが回転した図形と、回転していない図形の照合を、ヒトのように「元の図形を回転したもの」ではなく、それぞれの角度の刺激を別のものと認識し象徴見本合わせを行っている可能性を排除するために、正規の向きで提示されている文字と鏡映文字の同時弁別習得させた。その後、見本合わせ課題により、反応時間を指標として心的回点現象を検討した。その結果、1個体は回転角度にあわせて反応時間が直線的に遅くなるとの結果が得られた。もう1個体ではそのような結果は得られなかった。これらのことは、弁別訓練により少なくとも1個体は心的回転といえる現象を示すことが明らかとなり、これまでの動物で心的回転現象が得られないことは、象徴見本合わせを行っていた可能性が示唆された。 3)チンパンジー実験: 19~39歳の雄チンパンジー5個体を対象に色と図形の同時弁別課題を実施した。うち2個体は文字(RとF)の鏡像弁別課題を習得したが、補助試行を必要とした.Rとその鏡像を弁別することは困難で、全課題で共通の負刺激(S)との対提示によって初めてRとその鏡像を弁別できた。13個体で対象の位置が回転する指さし3選択課題を実施した。ほとんどの個体が食物の位置を正しく答えることができたが、2個体は選択できなかった。一連の訓練において経験や年齢による影響が示唆された。
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