2010 Fiscal Year Annual Research Report
児童自立支援施設所蔵資料の分析による少年教護法成立経緯に関する研究
Project/Area Number |
19330173
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
二井 仁美 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (50221974)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 由可里 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60322210)
石原 剛志 静岡大学, 教育学部, 准教授 (10340043)
|
Keywords | 少年教護法 / 荒川五郎 / 愛知以西二府十六県感化院長会議常設委員 / 感化法 / 熊野隆治 / 武田慎治郎 / 池田千年 / 田中藤左衛門 |
Research Abstract |
本研究は、少年教護法の成立経緯の解明を目的とする。同法案の作成、同法の成立に関しては武田慎治郎、田中藤左衛門、池田千年、熊野隆治ら感化法改正期成同盟の果たした役割が強調されてきたが、本研究では関係史料の発掘に重点を置き、本年度は新たに静岡県立三方原学園所蔵史料等の調査をおこなうとともにこれまでに影印本とした少年教護法関係資料の分析より、以下の成果を得た。 第一に、少年教護法案の成立から議会提出にいたる経緯を検討し、感化法改正期成同盟会結成以前における感化院長らの具体的な行動と、荒川五郎の法案提出承諾の経緯、愛知以西二府十六県感化院長会議常設委員(以下「常設委員」)が作成した「少年教護法案私案」が帝国議会に提出される少年教護法案であることの確認とその資料的性格、「少年教護法案私案」を全国の感化院長の「総意」としての少年教護法案とする過程を明らかにした。第二に、感化院関係者は、感化院の状態に対して、いかなる問題意識を抱き、感化法改正にどのような期待をもって関与したのか、またかれらの希望の何がどのように実現しあるいは実現しなかったのか、法案審議過程において、個々の感化院関係者と荒川はどのように行動しいかなる役割を果たしたか、また感化法改正期成同盟とはいかなる組織であったかについて、文書や関係者間で交わされた電報などの分析により検討した。第三に、少年教護法案の内容について、法案段階から成立までの変遷を検討し、常設委員を中心とする感化院関係者が感化院における実践的課題に根ざした法案を作成したにもかかわらず議会での修正を余儀なくされたこと、修正を池田は「こそくの改正」と捉えたこと、それは感化院関係者の思いと法律の性質を象徴するものであったことを明らかにした。すなわち、少年教護院の入所対象者に関する規定、児童鑑別のあり方、少年教護委員等に関わって、少年法を所管する司法省との関係において、法案の修正が衆議院および貴族院の両議会で迫られ、会期内の法案成立のために譲歩が強いられたのである。以上の成果は、社会事業史学会において発表した。
|
Research Products
(8 results)