2009 Fiscal Year Annual Research Report
「いのちの尊厳」教育における生命科学の位置価値に関する教育課程の国際比較研究
Project/Area Number |
19330178
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
増渕 幸男 Sophia University, 総合人間科学部, 教授 (40149076)
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Keywords | いのちの尊厳 / 生命科学 / ゲノム / 死生観教育 / 自殺 / 臓器移植 / 脳死判定 / 葬送儀式 |
Research Abstract |
平成21年度は6回の研究会を開催し、協働研究者がそれぞれの研究分担内容について定期的な研究成果の発表を行い、その報告に基づいて参加者全員での討議により課題の発展と深化を実現することができた。また、国際比較の具体的実践として、昨年度(平成20年)に中国の研究者を2名招聘して研究を展開したのに続いて、今年度は中国を4名で訪問し、中国の研究者たちといのちの教育について計議し、課題に対する日中の類似点と相違点を確認することができた。さらに、韓国より研究者を招聘して講演と討議を行い、韓国でのいのちの尊厳に関する教育的思想のあり方について多くの知見を得るとともに、日韓両国の教育が抱えているいのちの教育に関する共同の課題も理解することができだ。これらの研究結果については、研究発表一覧にあるとおり、中国と韓国での講演、学会発表、論文執筆、著書等々において公にしてきた。 教育現場で苦慮している「いのちの尊厳」に関する教育は、科学的発展によって教育課程に持ち込まれている生命の解釈が、十分な思想的・歴史的・文化的な背景を抑えたうえでの学習と結びついていないことに関連している。この点は日本だけでなく、中国と韓国においても共通している問題であるが、中国と韓国においては仏教・儒教倫理とキリスト教などの宗教的背景があることから、初等教育段階からその見直しが教育課程に組み込まれてきていることも理解できた。このことを日本でも今後考慮する必要があるであろうし、教科書の編纂についても工夫がいるであろう。このことは特に中国と韓国の教科書を翻訳・分析することによっても理解され、生命科学の取り込み方に過度に依存する日本の現状がわかった。自殺者の多さにおいても日中は問題性を共有していることから、今後共同して継続的に研究していくことの重要性が明らかにされた。
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